side蓮
「敦賀さん、何か入ってますよ?」と言いながらそれを取り出してみる彼女はその正体が解らずに俺を見上げて首を傾げる。
「あの、このカード何ですか?」
そんな表情も可愛いな。そんな風に上目遣いで見上げられると俺の理性が大変なんだけど。
俺は頬杖を付いたまま彼女を眺めていたが少し身を乗り出して彼女の耳元に唇を寄せて、いつもより少し低めの声で伝える。
「それはね、俺の部屋の鍵。君ならいつでも大歓迎だから。持ってて。」
唇で耳たぶに軽く触れてから、何もなかったかのようにすっと身を退いた。
最上さんは驚いてその大きな瞳が溢れそうなほど見開いて一瞬固まってしまった。そして小さく息を吐くと頬をほんわりピンク色に染めて、カードキーを大事そうに胸元に抱いて俺を見上げてくる。
「ありがとうございます、大事にしますね?」
この上なく嬉しいといった笑顔を浮かべて俺を見上げてくる最上さんを抱き寄せてしまわないようにするのに殊更神経を注ぐ。普段の最上さんなら見る事の出来ないであろうその表情に俺は翻弄されっぱなしだ。
「うん、楽しみにしてるよ。」俺は今、いったいどんな顔をしているんだろうか。敦賀蓮を保っている自信がない。ここにいるのは敦賀蓮が演じている彼ではなくて、目の前の彼女を誰よりも愛しいと思うただの男でしかないのだから。
そのまま暫く最上さんとの会話を続けていると助監督からカットの声がかかった。
「蓮、最上さん、君たちはこれで上がりだ。いい絵がとれたよ。あとは俺がアートに仕上げてやるから巻かせとけって!」
黒崎監督の楽しそうな声に俺も最上さんも緊張を解く。最上さんは「「お疲れさまでした。」」と監督に挨拶をして俺達は顔を見合わせた。最上さんは「敦賀さん、ありがとうございました。」とお辞儀をする。俺も「お疲れさま」と笑顔で返す。「もう少しだけ恋人気分でいてもいいかな?」と続けて、彼女の返事を待たずに彼女を引き寄せてエスコートしてスタジオをあとにした。
「あ、ありがとうございます…」と小さく呟いて下を向いている最上さんは俺の予想通り一人ではうまく歩けないようで、遠慮がちに俺にもたれる。
「大丈夫だよ、お嬢さん。体預けて。」と彼女にだけ聞こえるように呟いて歩き続ける。こんな一時さえ俺には至福の時だ。
後ろから付いてきている社さんがニマニマ顔なのはとりあえず気づかないふりを決め込む事にした。後で遊ばれるんだろうけれど。
「敦賀さん、何か入ってますよ?」と言いながらそれを取り出してみる彼女はその正体が解らずに俺を見上げて首を傾げる。
「あの、このカード何ですか?」
そんな表情も可愛いな。そんな風に上目遣いで見上げられると俺の理性が大変なんだけど。
俺は頬杖を付いたまま彼女を眺めていたが少し身を乗り出して彼女の耳元に唇を寄せて、いつもより少し低めの声で伝える。
「それはね、俺の部屋の鍵。君ならいつでも大歓迎だから。持ってて。」
唇で耳たぶに軽く触れてから、何もなかったかのようにすっと身を退いた。
最上さんは驚いてその大きな瞳が溢れそうなほど見開いて一瞬固まってしまった。そして小さく息を吐くと頬をほんわりピンク色に染めて、カードキーを大事そうに胸元に抱いて俺を見上げてくる。
「ありがとうございます、大事にしますね?」
この上なく嬉しいといった笑顔を浮かべて俺を見上げてくる最上さんを抱き寄せてしまわないようにするのに殊更神経を注ぐ。普段の最上さんなら見る事の出来ないであろうその表情に俺は翻弄されっぱなしだ。
「うん、楽しみにしてるよ。」俺は今、いったいどんな顔をしているんだろうか。敦賀蓮を保っている自信がない。ここにいるのは敦賀蓮が演じている彼ではなくて、目の前の彼女を誰よりも愛しいと思うただの男でしかないのだから。
そのまま暫く最上さんとの会話を続けていると助監督からカットの声がかかった。
「蓮、最上さん、君たちはこれで上がりだ。いい絵がとれたよ。あとは俺がアートに仕上げてやるから巻かせとけって!」
黒崎監督の楽しそうな声に俺も最上さんも緊張を解く。最上さんは「「お疲れさまでした。」」と監督に挨拶をして俺達は顔を見合わせた。最上さんは「敦賀さん、ありがとうございました。」とお辞儀をする。俺も「お疲れさま」と笑顔で返す。「もう少しだけ恋人気分でいてもいいかな?」と続けて、彼女の返事を待たずに彼女を引き寄せてエスコートしてスタジオをあとにした。
「あ、ありがとうございます…」と小さく呟いて下を向いている最上さんは俺の予想通り一人ではうまく歩けないようで、遠慮がちに俺にもたれる。
「大丈夫だよ、お嬢さん。体預けて。」と彼女にだけ聞こえるように呟いて歩き続ける。こんな一時さえ俺には至福の時だ。
後ろから付いてきている社さんがニマニマ顔なのはとりあえず気づかないふりを決め込む事にした。後で遊ばれるんだろうけれど。