サイドキョーコ
カフェの入口を入ると既に来ていた新開監督が敦賀さんを手招きして呼んでいた。それに応えて敦賀さんは中に入っていく。私はつい躊躇って足が進まない。そこに後ろから貴島さんが来て、私を奥へとナビゲートしてくれた。敦賀さんが先に監督の隣に座ったので何となくほっとする。正面に座ったけど、二人の間にあるテーブルが私に安心を与えてくれた。隣に座った貴島さんもちょうどいい距離を空けてくれている。注文した朝食のプレートが運ばれてきて和やかな朝食が始まる。貴島さんにオレンジジュースが似合うと言われて意味はよく解らなかったけれど可愛くて健康的と言われて嬉しくなった。なのに敦賀さんは子供っぽいなんて言って私を子供扱い。私はちょっぴり悲しくなった。口を尖らせる私に『そういう所がまだまだ子供なんだよ。』と笑う敦賀さんが憎たらしくて貴島さんに助けを求めてしまう。貴島さんはなぜかほんのりと赤い顔をしながらも「大丈夫、いじめっ子からは俺が護ってあげるから頼っておくれよ。」と言ってくれる。とても嬉しくて「はいっ!ありがとうございます!」と答えると貴島さんはピタッと動かなくなってしまった。そんな私達を見て監督が「朝からお熱い事だな。」と左手を団扇代わりに自分の顔を仰ぐ。「そ、そんなつもりじゃ…」と急に恥ずかしくなって真っ赤になって俯いてしまった。監督は笑っている。貴島さんは頭を掻きながら苦笑い。私は監督をキッと睨んで「もぉ、新開監督まで私をからかってらっしゃるんですね!」と怒り顔をして見せる。。監督の楽しそうに笑いながら「ごめんごめん」と気持ちのこもらない謝罪に私も怒るのが馬鹿馬鹿しくなって笑ってしまう。貴島さんも笑っている。そこで初めて違和感を感じた。敦賀さんの気配がない。私の前でテーブル越しに一緒に笑っていると思い込んでいたのに、今は敦賀さんの声も息づかいさえも感じられない。私は急に不安になって敦賀さんを見た。そして心臓が凍る程の恐怖を感じた。いつも穏やかで微笑みを浮かべているはずのその顔は真っ白で、言葉がなくても雄弁にいろんな事を語ってくれるその瞳は何も写してはいなかった。そこに座っていたのは敦賀さんの脱け殻だった。
私はすっと席を立ち、敦賀さんの傍に近付いた。床に膝をついて敦賀さんの顔を見上げる。
「つる…が、さん?」
その声に敦賀さんは反応してはくれなかった。
カフェの入口を入ると既に来ていた新開監督が敦賀さんを手招きして呼んでいた。それに応えて敦賀さんは中に入っていく。私はつい躊躇って足が進まない。そこに後ろから貴島さんが来て、私を奥へとナビゲートしてくれた。敦賀さんが先に監督の隣に座ったので何となくほっとする。正面に座ったけど、二人の間にあるテーブルが私に安心を与えてくれた。隣に座った貴島さんもちょうどいい距離を空けてくれている。注文した朝食のプレートが運ばれてきて和やかな朝食が始まる。貴島さんにオレンジジュースが似合うと言われて意味はよく解らなかったけれど可愛くて健康的と言われて嬉しくなった。なのに敦賀さんは子供っぽいなんて言って私を子供扱い。私はちょっぴり悲しくなった。口を尖らせる私に『そういう所がまだまだ子供なんだよ。』と笑う敦賀さんが憎たらしくて貴島さんに助けを求めてしまう。貴島さんはなぜかほんのりと赤い顔をしながらも「大丈夫、いじめっ子からは俺が護ってあげるから頼っておくれよ。」と言ってくれる。とても嬉しくて「はいっ!ありがとうございます!」と答えると貴島さんはピタッと動かなくなってしまった。そんな私達を見て監督が「朝からお熱い事だな。」と左手を団扇代わりに自分の顔を仰ぐ。「そ、そんなつもりじゃ…」と急に恥ずかしくなって真っ赤になって俯いてしまった。監督は笑っている。貴島さんは頭を掻きながら苦笑い。私は監督をキッと睨んで「もぉ、新開監督まで私をからかってらっしゃるんですね!」と怒り顔をして見せる。。監督の楽しそうに笑いながら「ごめんごめん」と気持ちのこもらない謝罪に私も怒るのが馬鹿馬鹿しくなって笑ってしまう。貴島さんも笑っている。そこで初めて違和感を感じた。敦賀さんの気配がない。私の前でテーブル越しに一緒に笑っていると思い込んでいたのに、今は敦賀さんの声も息づかいさえも感じられない。私は急に不安になって敦賀さんを見た。そして心臓が凍る程の恐怖を感じた。いつも穏やかで微笑みを浮かべているはずのその顔は真っ白で、言葉がなくても雄弁にいろんな事を語ってくれるその瞳は何も写してはいなかった。そこに座っていたのは敦賀さんの脱け殻だった。
私はすっと席を立ち、敦賀さんの傍に近付いた。床に膝をついて敦賀さんの顔を見上げる。
「つる…が、さん?」
その声に敦賀さんは反応してはくれなかった。