「敦賀さん、敦賀さん!」
鈴を鳴らすような彼女の可愛い声が俺の耳に届く。俺は木陰のベンチで台本に目を落としていた。彼女の声の方に視線だけを向けると彼女はジュースを買いに行って戻って来たのだが、なぜか満面の笑みで掛けてくる。その姿に自然に俺も笑顔になる。読みかけの台本を閉じて、立ち上がると掛けてくる彼女を両腕で出迎える。彼女はそのままポスンと俺の胸の中に飛び込んで来て、ニッコリとキューティーハニースマイル攻撃。俺はその笑顔に撃ち抜かれ、自然にゆっくりと目を閉じて彼女の顔に顔を近づける。もう少しで唇同士が触れると思った瞬間、ひんやりと冷たくて硬い感触に驚いて目を開けた。「つめたっ!」と思わず声を上げた俺に彼女は子供のような笑顔で「大成功!」ところころ笑う。俺はちょっとムッとして彼女の手からジュースの缶を奪って改めて唇を奪おうとした。すると彼女は俺の胸元に置いていた手でトントンと軽く俺の胸を叩く。「ん?」と首を傾げると「敦賀さん、上、上を見て下さい。」と言われる。俺は言われるがままに上を見る。しかし何も見当たらない。「上がどうしたの?」と聞けば「…鱗雲」と小さく答えが返ってきた。「えっ?」ともう一度見上げれば確かに鱗雲。夕方の西日に照らされてキラキラと輝いて見えた。「本当だ、気づかなかったよ。綺麗だね?」と言うと彼女は嬉しそうに笑って「はいっ!」と一緒に空を見上げる。
「敦賀さんは背が高いから下を見てばっかりでこんな風景はなかなか見ないでしょ、勿体無い。」と可愛らしく口を尖らせて彼女は言う。「私は…敦賀さんを見上げる度に空が見えるんです。お得でしょ?」と自慢気な顔。俺はそんな彼女の額に触れるだけのキスを落としてそっと彼女を腕の中に収める。「俺は下を見ているんじゃないよ。君を見ると自然に下を向いているだけさ。でも、君が俺の気づかない風景を教えてくれるから、俺はずっと新鮮な発見が出来るんだよ。上を見る事も横を見る事も君が教えてくれた。そしてこれからも教えてくれるよね?」
彼女は耳朶まで真っ赤にして俯いてしまう。そして小さく「はい」と答えて顔を俺の胸に埋めた。
秋の空、秋の風、そして流れる穏やかな時間。君と二人で感じる季節は全てが俺の宝物になっていく。
鈴を鳴らすような彼女の可愛い声が俺の耳に届く。俺は木陰のベンチで台本に目を落としていた。彼女の声の方に視線だけを向けると彼女はジュースを買いに行って戻って来たのだが、なぜか満面の笑みで掛けてくる。その姿に自然に俺も笑顔になる。読みかけの台本を閉じて、立ち上がると掛けてくる彼女を両腕で出迎える。彼女はそのままポスンと俺の胸の中に飛び込んで来て、ニッコリとキューティーハニースマイル攻撃。俺はその笑顔に撃ち抜かれ、自然にゆっくりと目を閉じて彼女の顔に顔を近づける。もう少しで唇同士が触れると思った瞬間、ひんやりと冷たくて硬い感触に驚いて目を開けた。「つめたっ!」と思わず声を上げた俺に彼女は子供のような笑顔で「大成功!」ところころ笑う。俺はちょっとムッとして彼女の手からジュースの缶を奪って改めて唇を奪おうとした。すると彼女は俺の胸元に置いていた手でトントンと軽く俺の胸を叩く。「ん?」と首を傾げると「敦賀さん、上、上を見て下さい。」と言われる。俺は言われるがままに上を見る。しかし何も見当たらない。「上がどうしたの?」と聞けば「…鱗雲」と小さく答えが返ってきた。「えっ?」ともう一度見上げれば確かに鱗雲。夕方の西日に照らされてキラキラと輝いて見えた。「本当だ、気づかなかったよ。綺麗だね?」と言うと彼女は嬉しそうに笑って「はいっ!」と一緒に空を見上げる。
「敦賀さんは背が高いから下を見てばっかりでこんな風景はなかなか見ないでしょ、勿体無い。」と可愛らしく口を尖らせて彼女は言う。「私は…敦賀さんを見上げる度に空が見えるんです。お得でしょ?」と自慢気な顔。俺はそんな彼女の額に触れるだけのキスを落としてそっと彼女を腕の中に収める。「俺は下を見ているんじゃないよ。君を見ると自然に下を向いているだけさ。でも、君が俺の気づかない風景を教えてくれるから、俺はずっと新鮮な発見が出来るんだよ。上を見る事も横を見る事も君が教えてくれた。そしてこれからも教えてくれるよね?」
彼女は耳朶まで真っ赤にして俯いてしまう。そして小さく「はい」と答えて顔を俺の胸に埋めた。
秋の空、秋の風、そして流れる穏やかな時間。君と二人で感じる季節は全てが俺の宝物になっていく。