蓮はさっき見た夢の内容を思い返していた。何故あんな夢を見たのか、『人殺し』とは自分に向けられた言葉なのか、どうして金髪碧眼の自分が血に染まる手を見つめて途方に暮れていたのか。そして、その手に握られていた腕時計…。その時計には見覚えがある。2時13分を指して沈黙したままの時計は今、ゲストハウスの蓮の部屋に置かれている。事故当日、その腕時計は蓮の右手首にあったらしい。なぜ壊れた時計を身に付けていたのか不思議に思いながらもきっと何か意味があるのだと持ち帰って、ベッド横のサイドテーブルのライトスタンドの足元に追いた。その傷や見た目から古いものだとは思ったが、蓮が今の容姿を装うようになって5年以上経っていると聞かされてあたので、それ以前の物なのだろうと想像できる。
蓮は熱めのシャワーを頭からかかりながら自分の中に浮かんだ疑問を何とか整理しようとするが全くうまくいかない。ふと自分の右手をみると、そこに無いはずの血痕がリアルに見える気がしてぎょっとする。
「俺は…いったい…」
バスルームの壁にもたれてまた目を閉じる。いい知れない恐怖に立っていられなくなり、ズルズルと座り込んでしまう。膝を抱えて俯いて小さなため息を吐くのがやっとだ。
「キョーコちゃん…」ふと漏れてしまった自分の声にハッとなり、蓮は自分の口を押さえる。頭の中に過る可愛い少女の顔。事故からこっちずっと一緒にいた少女。コロコロと変わる表情をいつも可愛いと思って見ていた。今浮かんでくるのは泣き顔なのに、その泣き顔に今まで冷えきっていた心がほわっと解れる感覚を受ける。
『俺はどれだけ…』苦笑するしかなく、だが、力が入るようになった身体を動かしてバスルームから出てバスローブを羽織っただけの姿で部屋のベッドに潜り込む。
ベッドの中ではまだやはり寝付けずにいた。さっきの夢の言い知れない恐怖。あれはただの夢なのか、それともリアルな過去なのか…。考えるだけで気持ちは闇に堕ちていく。怖いと思った瞬間、またキョーコを思う自分がいた。頭の中に浮かぶ少女の顔に堕ちかけていた気持ちは容易く浮上する。ほっとするような暖かい感覚が蓮を穏やかな眠りに誘う。眠るのが怖くて、夢を見るのが怖くて寝付けずにいたのに、『キョーコちゃん』でこんなに暖かくなってしまう自分の心が少し気恥ずかしい。
キョーコの面影を心に描いて、蓮は誘われるままにいつの間にか眠りについた。
蓮は熱めのシャワーを頭からかかりながら自分の中に浮かんだ疑問を何とか整理しようとするが全くうまくいかない。ふと自分の右手をみると、そこに無いはずの血痕がリアルに見える気がしてぎょっとする。
「俺は…いったい…」
バスルームの壁にもたれてまた目を閉じる。いい知れない恐怖に立っていられなくなり、ズルズルと座り込んでしまう。膝を抱えて俯いて小さなため息を吐くのがやっとだ。
「キョーコちゃん…」ふと漏れてしまった自分の声にハッとなり、蓮は自分の口を押さえる。頭の中に過る可愛い少女の顔。事故からこっちずっと一緒にいた少女。コロコロと変わる表情をいつも可愛いと思って見ていた。今浮かんでくるのは泣き顔なのに、その泣き顔に今まで冷えきっていた心がほわっと解れる感覚を受ける。
『俺はどれだけ…』苦笑するしかなく、だが、力が入るようになった身体を動かしてバスルームから出てバスローブを羽織っただけの姿で部屋のベッドに潜り込む。
ベッドの中ではまだやはり寝付けずにいた。さっきの夢の言い知れない恐怖。あれはただの夢なのか、それともリアルな過去なのか…。考えるだけで気持ちは闇に堕ちていく。怖いと思った瞬間、またキョーコを思う自分がいた。頭の中に浮かぶ少女の顔に堕ちかけていた気持ちは容易く浮上する。ほっとするような暖かい感覚が蓮を穏やかな眠りに誘う。眠るのが怖くて、夢を見るのが怖くて寝付けずにいたのに、『キョーコちゃん』でこんなに暖かくなってしまう自分の心が少し気恥ずかしい。
キョーコの面影を心に描いて、蓮は誘われるままにいつの間にか眠りについた。