小さな店の二階の座敷を借りきって食事会は行われた。まずは新開の挨拶。
「みんな、近頃ずっと撮影で忙しくしていると思う。途中でシナリオが変わったりしたから迷惑もかけたと思うが皆付いてきてくれてありがとう。ドラマの放映も想像以上の視聴率で俺もすごく嬉しい。ここ横浜でのロケは明日もあるが、今夜はこれからのラストスパートに向けて鋭気を養ってくれ。」
皆から盛大な拍手がおこる。
「あ、それからだな、今日の撮影はみんなの協力で思いがけなく蓮のいい表情を撮る事が出来た事を報告する。放映が凄く楽しみだ!」
また皆から大きな拍手がおこる。「よし、じゃぁ、貴島くん、ビシッと乾杯の声を頼むよ」と貴島は新開に大役を仰せつかった。
すっと貴島は立ち上がる。
「このドラマ、俺自身だんだん嵌まってるんです。まゆみちゃんは可愛いしみのるは見てくれだけでかなりヘタレだし。上野はとってもいい奴で凄く気に入ってます。そして、新開監督を中心に皆さんと一緒に凄いものを作っている事を実感してます。皆さんが俺と同じような感覚を味わっていて下さると嬉しい凄く嬉しいです。それでは、このドラマの成功とこれからの俺達の躍進を願いまして、乾杯っ!」
「「「「乾杯っ!」」」」全員の声が調和し、拍手がおこる。そして次々と運ばれてくる本格中華の品々に皆下積みを打つ。
キョーコは自分からなかなか料理に手をつけようとしない蓮の為に手元にある取り皿に料理を少しずつ彩りよく盛り付けて手渡す。するとそれを見た貴島が「いいなぁ、敦賀くんだけ?」と首を傾げてキョーコを見る。キョーコは「こんな感じでいかがですか?」と貴島にも上手く盛り付けて取り皿を渡す。キョーコを挟んで座る男二人はこんな具合でキョーコに世話を焼かれて幸せそうだ。新開はそんな三人の姿を微笑ましいと思いながら眺めている。隣に座った社に「蓮もあんな顔するんだな…。」と聞けば「俺も初めてみましたよ。」と返され「ほぉ、これもキョーコちゃんの効能かい?」と関心している。そんな蓮の表情に一緒にテーブルを囲んでいる女性スタッフはほんわりと酔いしれて夢見心地だ。そんな威力絶大の蓮の隣で直接攻撃を受けながら動揺すらしないキョーコはそこにいた全員から『最強の勇者』の認定を受けた。