「まさか、全部使われてるなんて…。」キョーコはコマーシャルに変わった画面をぼんやり眺めながら呟く。この番宣を収録する時にプロデューサーは「使えるところを繋げるから好き勝手にやってくれ」という指示を出した。だから、三人とも好き勝手に喋っていた。キョーコは蓮と貴島に失礼な事をいったりしたりしているのではないかと思いつつもかなりリラックスして収録に臨めた。たかだか番宣でこれほどの長時間の放映がされるなど考えてもみなかったからだ。なんだか気恥ずかしくて申し訳なくて、隣に座る蓮を盗み見るように視線を動かすと蓮の視線とぶつかって、キョーコは固まってしまった。
「なかなか面白い番宣になってたよね?」と楽しそうに言う蓮が不機嫌ではない事にホッとしながらも「なんだか私、失礼な事を言ったりしてますよね、ごめんなさい。」と頭を下げようとしたら蓮の左手が伸びてきて阻まれてしまった。
「俺はさっきの映像気に入ってるよ。プロデューサーも気に入ったからそのまま使ったんだよ。多分今夜のドラマの視聴率はまた高くなるよ。」と笑顔で言われてしまえば、キョーコは頷くしかない。あまり納得はしてなかったキョーコだったが、蓮がご機嫌なので問題ないだろうと考える事にした。

蓮の予想通り、その夜のドラマの視聴率は凄い事になっていた。次の日、巷では「みのるが…」とか「まゆみが…」という会話があちこちでされていた。そして、その中で、「京子が着けてた時計可愛かったよねぇ。」「京子の持ってたバッグってどこのブランド?」など、女性陣からの京子に対する支持と関心がぐっと高まっていた。京子を悪者扱いする声はどんどん小さくなっていった。