サイド蓮
マネージャーさんに呼ばれて化粧室から出てきた松内瑠璃子ちゃん。資料によると彼女は事務所の後輩で、俺達は共演経験がある。化粧室からキョーコちゃんが押し出される形で出てきたのだ、中できっと何かがあったに違いないが、キョーコちゃんに聞いても何も言わないだろう事は想像に難くない。なら、瑠璃子ちゃんに聞いてみようとしたが、彼女もニコニコと「何もないですよ。」と答えるだけ。ま、教えて貰えないのか…。
その時、化粧室からまた違う声が聞こえた。
「なをなのよ一体。あんな地味な女庇っても何の得にもなりゃしないのにさ」「恩でも売ろうって事なんじゃない?」「恩を売っても見返りないでしょ?」「敦賀さんと仲良くなれるとかは?」「ないない、あり得ないよ(笑)」「松内瑠璃子って美白で売ってるらしいけどさ、あれって自前じゃないんじゃない?」「なんか塗り込んでたりしてねぇ(笑)」「芸名は『松内瑠璃子』でも、本名は『白壁塗子(シラカベヌリコ)』だったりしてさ(笑)」
「あんた、そのネーミングセンスだけは認めるわ(笑)」
凄く楽しげな声。だが内容は他人の中傷でしかない。瑠璃子ちゃんに対する中傷。その前にキョーコちゃんが押し出されて出てきた化粧室にまだ人がいた事、そして、化粧室から笑いながら出てきて俺達を見つけた時の彼女達の狼狽え方をみて、俺は中であった事をなんとなく理解した。その瞬間、俺の胸の奥から言い知れない怒りが込み上げてくる。しかし、今の俺は『敦賀蓮』だ。ブランドイメージを壊す訳にはいかない。
「敦賀さん、これから休憩ですか?」
「やぁ、皆さんも休憩ですか?」駆け寄ってくる女優達に『敦賀蓮』として挨拶を返す。「はい、これからお昼ご飯をって話してたんですが、敦賀さんとご一緒させていただいても宜しいですか?」
「あぁ、構わない…「ごめんね、もう俺たちお店予約しちゃってるんだ。キョーコちゃんと瑠璃子ちゃんも来たし、後は新開監督が来たら出掛けるんだよ。」なんだ、もう決まってたんですか、社さん」
『敦賀蓮』としては誰からの誘いも無下に出来ない。それを上手くフォローしてくれる社さんに感謝する。
「おぉ、俺を誰だと思ってるんだ、敦賀蓮の敏腕マネージャーだぞ(笑)」「そうですね、いつもありがとうございます。」社さんとのこんな掛け合いは本当に小気味良く進む。俺は記憶を失う前からこの人にこうやってサポートされてきたんだろう。感謝するばかりだ。
マネージャーさんに呼ばれて化粧室から出てきた松内瑠璃子ちゃん。資料によると彼女は事務所の後輩で、俺達は共演経験がある。化粧室からキョーコちゃんが押し出される形で出てきたのだ、中できっと何かがあったに違いないが、キョーコちゃんに聞いても何も言わないだろう事は想像に難くない。なら、瑠璃子ちゃんに聞いてみようとしたが、彼女もニコニコと「何もないですよ。」と答えるだけ。ま、教えて貰えないのか…。
その時、化粧室からまた違う声が聞こえた。
「なをなのよ一体。あんな地味な女庇っても何の得にもなりゃしないのにさ」「恩でも売ろうって事なんじゃない?」「恩を売っても見返りないでしょ?」「敦賀さんと仲良くなれるとかは?」「ないない、あり得ないよ(笑)」「松内瑠璃子って美白で売ってるらしいけどさ、あれって自前じゃないんじゃない?」「なんか塗り込んでたりしてねぇ(笑)」「芸名は『松内瑠璃子』でも、本名は『白壁塗子(シラカベヌリコ)』だったりしてさ(笑)」
「あんた、そのネーミングセンスだけは認めるわ(笑)」
凄く楽しげな声。だが内容は他人の中傷でしかない。瑠璃子ちゃんに対する中傷。その前にキョーコちゃんが押し出されて出てきた化粧室にまだ人がいた事、そして、化粧室から笑いながら出てきて俺達を見つけた時の彼女達の狼狽え方をみて、俺は中であった事をなんとなく理解した。その瞬間、俺の胸の奥から言い知れない怒りが込み上げてくる。しかし、今の俺は『敦賀蓮』だ。ブランドイメージを壊す訳にはいかない。
「敦賀さん、これから休憩ですか?」
「やぁ、皆さんも休憩ですか?」駆け寄ってくる女優達に『敦賀蓮』として挨拶を返す。「はい、これからお昼ご飯をって話してたんですが、敦賀さんとご一緒させていただいても宜しいですか?」
「あぁ、構わない…「ごめんね、もう俺たちお店予約しちゃってるんだ。キョーコちゃんと瑠璃子ちゃんも来たし、後は新開監督が来たら出掛けるんだよ。」なんだ、もう決まってたんですか、社さん」
『敦賀蓮』としては誰からの誘いも無下に出来ない。それを上手くフォローしてくれる社さんに感謝する。
「おぉ、俺を誰だと思ってるんだ、敦賀蓮の敏腕マネージャーだぞ(笑)」「そうですね、いつもありがとうございます。」社さんとのこんな掛け合いは本当に小気味良く進む。俺は記憶を失う前からこの人にこうやってサポートされてきたんだろう。感謝するばかりだ。