新開の言葉に再び凍りつく女優達。
「確かにネーミングセンスはいい線行ってると想うよ。でも、悪口は聞かれちゃ困る人のいないところで言わなくちゃ、ね。」蓮の穏やかな台詞。穏やかなだけにそら恐ろしい。
「そぉだな。そのセンス、これからの演技にも生かせるように頑張ってくれや(笑)」新開はさも面白そうにそう告げる。女優達の顔がますます引き吊る。

蓮は自分の服の袖口がキュッと控えめに引っ張られた感覚にそちらを振り返ると、キョーコが申し訳無さそうに俯いたまま蓮の服の袖口を掴んでいる。
「キョーコちゃん、どうしたの?」とキョーコにしか聞こえないくらいの小声で問いかける。「あの、もう…その辺…で……。」途中から聞き取れないほど声が小さくなっていく。
「あぁ、ごめんね。お腹空いたよね。」蓮はキョーコの頭を掴まれていない方の手でなでてそう笑う。
「いえ、あの私は…」キョーコは困ってしまって上手く言葉がでない。
「ハイエナ部員のくせに敦賀さんに頭を撫でてもらうなんて相変わらず図々しいわねっ!」
「瑠璃子ちゃん、違うの、コレは…」キョーコはまたも困って言い澱む。
「そんなウジウジしてるからその辺の有象無象にやり込められるのよっ!あんたはちゃんと期待に応えてるんだから、ちゃんと自信を持ちなさいっ!」怒り顔だが瑠璃子はキョーコを励ましている。
「うん、ありがとう瑠璃子ちゃん。」
「さて、じゃぁ飯行くぞ。キョーコちゃんの大好きな目玉焼きの乗ったハンバーグが美味しい店を社君に探してもらったんだ。かなり前の話になるがほんのお礼のつもりだよ。しっかり食べろよ、キョーコちゃん。」
「はい、ハンバーグ!」
「君達悪いな。そういう事だからまた撮影で。あ、コイツらに対して謝罪は要らない。償いは演技でしてくれ。無理そうなら俺が帰るまでに消えてくれて構わないからな。」

新開を先頭にLMEの面子は立ち去る。その背中を見送る女優達は悔しさにジタンダを踏み、ほぞを噛む。が、食事から帰った新開達は彼女達にこのスタジオで会う事はなかった。