そこに件の女優達が化粧室から出てきた。
「なをなのよ一体。あんな地味な女庇っても何の得にもなりゃしないのにさ」「恩でも売ろうって事なんじゃない?」「恩を売っても見返りないでしょ?」「敦賀さんと仲良くなれるとかは?」「ないない、あり得ないよ(笑)」「松内瑠璃子って美白で売ってるらしいけどさ、あれって自前じゃないんじゃない?」「なんか塗り込んでたりしてねぇ(笑)」「芸名は『松内瑠璃子』でも、本名は『白壁塗子(シラカベヌリコ)』だったりしてさ(笑)」
「あんた、そのネーミングセンスだけは認めるわ(笑)」
さっきまでとはうって変わってキャーキャーゲラゲラ笑いながら化粧室から出てきた女優達は近くで立ち話をしている面子をみて一瞬凍りつく。しかし、その面子が談笑しているので、今のやり取りは聞こえてないと思い、お目当ての蓮に走り酔って声をかける。
「敦賀さん、これから休憩ですか?」
「やぁ、皆さんも休憩ですか?」蓮は穏やかな笑顔で挨拶をする。
「はい、これからお昼ご飯をって話してたんですが、敦賀さんとご一緒させていただいても宜しいですか?」
「あぁ、構わない…「ごめんね、もう俺たちお店予約しちゃってるんだ。キョーコちゃんと瑠璃子ちゃんも来たし、後は新開監督が来たら出掛けるんだよ。」なんだ、もう決まってたんですか、社さん」
「おぉ、俺を誰だと思ってるんだ、敦賀蓮の敏腕マネージャーだぞ(笑)」「そうですね、いつもありがとうございます。」
「あの、皆さんは同じ事務所だから解りますけど、監督までなぜですか?」「そうよね、松内さんは部外者でしょ?私達は一緒にお仕事し「おぉっ、待たせたな、蓮!」」
「監督、意外と早かったじゃないですか。」「本当に。もぉ少しかかるかと思ってましたよ。」
「ふっ、この俺にかかればあんな雑用ごとき瞬殺だ(笑)」
「あの、監督、私達もご一緒させて…」と女優の一人が言いかけた言葉は新開に遮られた。
「すまんな、コイツらは前の映画で共演した連中で、俺、蓮、瑠璃の三人ともキョーコちゃんには恩がある。まぁ、飯でも奢るわってノリなんで遠慮してくれ。」
「…恩、ですか?」
「あぁ、大事な事を瑠璃に思い出させてくれた救世主さ。キョーコちゃんが居なかったら瑠璃は本当に『白壁塗子』になってただろうからな。」「「「っ!」」」

ここで初めて先ほどのやり取りが皆に聞かれていた事を知る女優達だった。