セバスチャンと二人になるとキョーコはどうしていいのか解らなくなった。考えてみれば事故の後、蓮以外の男性と二人になるというシチュエーションはなかった。キョーコは戸惑いを隠せない。
「敦賀様がいないと不安ですか?」とても穏やかな声にキョーコは驚く。「えっ…いえ、あの…、はい…。」
「京子様は素直な方ですね。」
「そんなっ」
「顔にもそう書いてありますよ。」
「…考えてみれば敦賀さん以外の男性と二人になるのは初めてなんです。敦賀さんは私が目覚めた時には傍にいてくれて、それからずっと一緒にいましたから…。でも、他の方にどう接していいのかわからなくて…。」
「あぁ、そうでしたね。これは失念しておりました、すみません。ですが、私を前にそんな気遣いをなさる必要はありません。私は京子様のマネージャー。影になり日向になって貴方をサポートする立場にあります。」
「はい…」
「旦那様から仰せつかったのは『京子を護れ』でございます。」
「『京子』を護る…ですか?」
「はい。京子様の事情を知り、サポートする事と危険回避でございます。」
「はあ…」
「そんなに難しく考えなくてもその内すぐに解ります。解らなくても問題はございません。私としましては解らないまま終われる事を期待するところでございます。」
キョーコはセバスチャンの言う言葉の意味がまだよく解らない。が、これ以上聞いても自分には理解できないだろうと思い「解りました。よろしくお願いします。」と笑顔を作った。
なんだかよく解らないが自分のしなければならない事は目の前にちゃんとある。その事実が何よりのありがたいとキョーコは思った。もしも自分に今、するべき事がなかったら…、その先は怖くて考えるのをやめてしまった。