サイトキョーコ

夢を見た。内容はよく覚えてないけど、凄く暖かくて懐かしくて眼を覚ましてしまうのが勿体無いと思うような夢。ゆっくり意識が浮上すると私には広すぎるベッドに独り。朝の日差しが窓から差し込んでいる。隣にいたはずの敦賀さんの姿がない。それだけで一気に不安が押し寄せてくる。私は極度の敦賀さん依存症みたいだわ。
バスルームの扉が開いて人が出てくる気配に私は身体を起こす。(敦賀さんだ)嬉しくなってそちらを見やれば上半身裸で濡れた髪をタオルで拭きながら敦賀さんが歩いてくる。
私は思わずシーツを頭から被って後ろを向く。
「起きたの?」と柔らかく響く声に「服っ!服を着てくださいっ!」とシーツを被ったまま叫ぶ。敦賀さんは「あぁ、ごめんごめん。」と笑いながらそれでもベッドの端に座って頭を拭いている。そしてシーツの上から私の身体をポンポンと叩いて「早く起きないとセバスチャンが迎えにきちゃうよ?」と楽しそうに声をかけてくる。私ははっとして身体を起こして…敦賀さんの半裸を目の当たりにしてしまった。
「…!◎×▲☆*▽!」
声にならない悲鳴を上げてまたうずくまる私に敦賀さんは笑うばかり。「もう知りません!」とベッドから出て部屋を出ようとズカズカ歩きドアノブに手をかけたタイミングで「お腹すいたな、キョーコちゃん」と後ろから声がかかる。「すぐに用意しましから、ふ!く!を!き!てっ!出てきてくださいっ!」と言い捨てて部屋を飛び出した。勢いよく扉を閉めて廊下を歩き出したけれど頬の火照りが取れない。でも、ふと違和感を感じた。(さっき敦賀さんは私のこと『キョーコちゃん』って言ったよね。)余計に顔が熱を持つ。身体中が熱くなる。この一週間ずっと『京子さん』だったのに急に『キョーコちゃん』と呼ばれた事にかなり動揺している私。落ち着け、落ち着くのよ、私っ!

敦賀さんは私の言い付け通りちゃんと服を着てリビングに来た。でも、私はひたすら恥ずかしくて敦賀さんと視線を合わせる事が出来ない。敦賀さんに「キョーコちゃん、まだ怒ってるの?」と聞かれても「しりませんっ!」とつっけんどんに答える事しか出来なかった。『キョーコちゃん』と呼ばれる度に鼓動が跳ねるのは、敦賀さんの声がいつもよりあまあましく響いたから…。