「へぇ、あのへたれ俳優がそん事言ったんだ…。」
ラブミー部の部室で奏江は資料の整理をしながらキョーコの話を聞いていた。キョーコは奏江の向かい側で同じように資料を整理しながら先ほどの記者会見の後の出来事をポツリポツリと話している。
キョーコはさっきからずっと下を向いたまま。パチンパチンと資料の紙の束の左上をステイプラーで閉じている。
「あんた、帰ってきてから泣いてばっかりよね。その内干からびちゃうんじゃない?」奏江はため息混じりに言ってみる。キョーコは「えっ?」と顔を上げて奏江を見る。さっきまで泣いて泣き腫らした目元にはまた涙が溜まってくる。
「なっ、なんで泣くのよっ!私がなんか悪いこといっちゃった?」
焦る奏江にキョーコはブンブンと首を横に振る。「違うの。モー子さんのせいじゃないの。ちょっとさっきの事を思い出しちゃって…。」
例の記者会見はよっぽどショックだったのだろう。記憶を失ってから一週間、キョーコは連と社長邸のゲストハウスで過ごしていた。会うのは社長とマリア、セバスチャンやその他の社長に仕える人達。そして奏江に社程度。精神科チームは一度カウンセリングを受けたがまだ二人に状況を受け入れられる器がないからと社長が中止した。ほんの限られた場所で限られた人達に守られて一週間を過ごした。復帰最初の記者会見。奏江はモニター越しに見ていたがキョーコが酷く痛々しかった。あの記者会見はキョーコにとって温室からいきなり南極に出されたような衝撃だったに違いない。これから仕事をしていく中で少なからず同じような誹謗中傷をうけなければいけない事も容易に想像出来るだけに、キョーコはなかなか気持ちを切り替える事ができずにいるのだ。
「ねぇ、あんた、敦賀さんが言った言葉の意味、ちゃんと解ってる?」
「えっ?なんだか難しくて解らなかった。ただ、敦賀さんが一生懸命私を慰めようとしてくれているのは解ってる。敦賀さんの為にも元気出さなきゃって思うんだけど…、やっぱりまた涙が出ちゃうの…。」
「そう、今は仕方ないんじゃない?でも、京子は辞めないんでしょ?」
「…うん。多分もっと辛い事これからあると思うけど、それは凄く嫌だけど、私頑張るっ!」
「ならいいわ。今はそれだけぜ充分よ。あんたがそう思ってるんなら敦賀さんもちゃんと解ってくれると思うわよ。」
今の奏江にはそう言う事が精一杯だった。
ラブミー部の部室で奏江は資料の整理をしながらキョーコの話を聞いていた。キョーコは奏江の向かい側で同じように資料を整理しながら先ほどの記者会見の後の出来事をポツリポツリと話している。
キョーコはさっきからずっと下を向いたまま。パチンパチンと資料の紙の束の左上をステイプラーで閉じている。
「あんた、帰ってきてから泣いてばっかりよね。その内干からびちゃうんじゃない?」奏江はため息混じりに言ってみる。キョーコは「えっ?」と顔を上げて奏江を見る。さっきまで泣いて泣き腫らした目元にはまた涙が溜まってくる。
「なっ、なんで泣くのよっ!私がなんか悪いこといっちゃった?」
焦る奏江にキョーコはブンブンと首を横に振る。「違うの。モー子さんのせいじゃないの。ちょっとさっきの事を思い出しちゃって…。」
例の記者会見はよっぽどショックだったのだろう。記憶を失ってから一週間、キョーコは連と社長邸のゲストハウスで過ごしていた。会うのは社長とマリア、セバスチャンやその他の社長に仕える人達。そして奏江に社程度。精神科チームは一度カウンセリングを受けたがまだ二人に状況を受け入れられる器がないからと社長が中止した。ほんの限られた場所で限られた人達に守られて一週間を過ごした。復帰最初の記者会見。奏江はモニター越しに見ていたがキョーコが酷く痛々しかった。あの記者会見はキョーコにとって温室からいきなり南極に出されたような衝撃だったに違いない。これから仕事をしていく中で少なからず同じような誹謗中傷をうけなければいけない事も容易に想像出来るだけに、キョーコはなかなか気持ちを切り替える事ができずにいるのだ。
「ねぇ、あんた、敦賀さんが言った言葉の意味、ちゃんと解ってる?」
「えっ?なんだか難しくて解らなかった。ただ、敦賀さんが一生懸命私を慰めようとしてくれているのは解ってる。敦賀さんの為にも元気出さなきゃって思うんだけど…、やっぱりまた涙が出ちゃうの…。」
「そう、今は仕方ないんじゃない?でも、京子は辞めないんでしょ?」
「…うん。多分もっと辛い事これからあると思うけど、それは凄く嫌だけど、私頑張るっ!」
「ならいいわ。今はそれだけぜ充分よ。あんたがそう思ってるんなら敦賀さんもちゃんと解ってくれると思うわよ。」
今の奏江にはそう言う事が精一杯だった。