医師達はローリー邸の応接室に通された。執事にゆったりとしたソファに座るように勧められて、ローリーと対峙する。

ロー「どうだった?」
鈴木「正直難しいです。私は敦賀さんの方を担当しましたが…。」
ロー「あぁ…」
高橋「最上さんの方は上手く受け入れてもらえましたよ。」
ロー「あぁ、多分そうだろう…。」
ローリーは二人からの報告が想定内という事を二人の告げた。蓮のカウンセリングはやはり困難を極めそうだ。来週またカウンセリングをして、困難そうなら中止も視野に入れて構わないと付け加える。鈴木は最初驚いて反論を試みたが、ローリーの判断に異を呈する事は出来なかった。

*****

「お祖父様、どうして蓮様のカウンセリングは難しいんですの?」心配そうに訪ねてくるマリアにローリーは答える。「マリア、あいつが誰かと深く関わった所を見た事があるか?」
マリアは少し考えて悲しそうに首を横にふる。
「だからだよ。あいつは深く関わらないんじゃなくて深く関わらせやからねぇ。誰も踏み込む事ができねぇんだよ、最上くん以外は、な。」
「お姉様だけ…、」
「記憶を飛ばして、そういう壁もなくなって欲しいと少しは期待したんだが、根っから不器用な奴だな、あいつは…。」

ローリーはため息と一緒に葉巻の煙を吐き出した。マリアは蓮とキョーコの特別過ぎる関係に悲しくなる気持ちを抑えられない。

「お祖父様、私は、私はお二人に何かして差し上げる事はできませんの?」
涙声ですがるように問いかける孫娘にローリーは優しく微笑み、マリアを抱き上げて窓辺に移動する。窓からは二人が生活するゲストハウスが見える。
「マリア、お前だけじゃない。俺も二人をどうにかしてやる事は出来ないんだ。手助けは出来ても助ける事は出来ない。自分でなんとかするしかないんだ。」
「…でも、お姉様は私を…」
「そうだな。最上くんはお前が皇貴に愛されている事に気づくきっかけをくれた。でも、彼女がお前に気づかせた訳じゃない。お前が勝手に気付いただけだ。」
「そんな…、だって私は…」マリアの頬を滴が伝う。
「勿論、最上くんが居なければ今のお前はあり得ない。彼女はそれほど大きなきっかけをくれた。だからマリア。焦るな。」
「…お祖父様?」
「俺達は今は見守るしか出来ない。それは凄く辛い役目だ。でも、あの子なら乗り越える。蓮まで一緒に引き上げてくれる、大丈夫だ。」

ローリーは確信していた。大丈夫だと。