二人は仲良くゲストハウスへ戻ってきた。そして朝9時から来客があるからもう休まなくてはという事でお互い自室に入った。

蓮は自室でシャワーを浴びて一度は眠ろうとベッドに転がったが寝付けずになんどか寝返りを打っていた。それでも訪れない眠気を諦めて起き上がる。『彼女はどうしているだろうか?』と思う。今更ながら何かにつけてずっとキョーコの事を考えている自分に気づき、蓮は苦笑する。部屋を出て、キッチンで飲み物を取ってリビングのソファに腰掛ける。昼間にセバスチャンが運んでくれていた資料の入った箱の中から小さなファイルを取り出す。

『敦賀蓮、2月10日うまれ、みずがめ座…』

自分がこれから演じる役のプロフィールを何気なく眺めている。デビューして6年。かなりの量の仕事をこなしていたらしく、出演した作品リストも大量だ。『これを見れば俺自身の事が少しは解るのか?』と蓮はため息を一つついた。そこにリビングの扉が開く音がして振り替えれば、キョーコが立っていた。

「あれ、敦賀さん?」
「やぁ、こんばんは。どうしたの?」
「私は喉が乾いたので飲み物を…。敦賀さんはどうされたんですか?」
「俺も同じようなものだよ。そしたら資料が目について、少し眺めてたんだ。」
「そうなんですか。あ、お隣いいですか?」
「えっ?あぁ、どおぞ」
蓮は少し右に寄ってキョーコに隣を勧める。キョーコは「ありがとうございます」とすとんと腰を落とす。
キョーコは『京子』と書かれた方のファイルを手に取りパラパラと捲り始めた。
「私はデビューして2年なんですね。本名は最上キョーコ、12月25日生まれ、京都出身…」
「へぇ、京子さんは京都出身なんだね。」
「そうみたいですね。でも関西弁とか私は使わないですよね?」
「本当に。不思議だな。」
「あっ、私、敦賀さんと一緒にお仕事させて頂いてるんですね?」
「あ、本当だ。『ダークムーン』か。明日はこの作品を一緒に観てみようか?」
「はい!」

「バラエティも幾つかあるよ。こっちも観なきゃ。」
「普段の私達ってどんなだったんでしょうね?」
「そうだね。近しい人達に少しずつ聞いてみよう。」
「そうですね。」
楽しい時間が過ぎていく。このままでもいいんじゃないかと思い始めたのは二人ともだった。