声を殺して泣き出したキョーコに奏江は優しく声をかけていた。奏江にしては珍しい事だ。なかなか泣き止みそうにないので、ソファのキョーコが腰かけている隣に座って優しく頭を撫でてやる。暫くの間キョーコは奏江にもたれて泣いていたが、スースーと規則正しい息づかいが聞こえてきた。キョーコは泣きつかれて寝てしまったようだ。
「確かに子供ね…」

眠ってしまったキョーコの重みを肩に感じながら奏江はこんなキョーコだからこそ今の状況下でも自分を保っていられるのではないかと考える。そして、奏江は眠ってしまったキョーコをソファに横たえて手元にあったクッションを枕代わりにあてがってやる。昨日案内されたキョーコの部屋に入り、ベッドの上にあったブランケットを取って帰ってきた。そっとブランケットをかけて寝顔を覗いてみる。なき疲れて目が真っ赤に腫れている。が、その表情はあどけなく無防備で、可愛いという陳腐な言葉で現すには勿体無いと思える。キョーコの目尻に溜まった涙をハンカチで拭い、自分は持といたテーブルに戻って残ったお茶を飲んだ。

『キョーコ、さっきあんたには言わなかったけど、あんたはずっと人のために生きてきたのよ。あんたに助けられた人がどれほどいるか、あんたは知らないんだろうけど、私も敦賀さんもあんたに助けられた一人なのよ。だから、あんたは幸せにならなきゃいけないの。私や敦賀さんや、他にもうんと沢山のあんたを大切に思う人たちの為にも。』