サイド蓮
社長が俺には個別に話があると言った。昨日も少し俺の事情が複雑だという事は聞かされていた。今俺が着けているカラコンの事も昨日聞かされた。試しにカラコンを取ったらその下から碧眼が現れて俺は腰がぬけるんじゃないかと思うほどに驚いた。これ以上何を聞かなければならないのか。何を受け入れなければならないのか…。そんな考えが焦りと恐怖になり俺の身体を、気持ちを縛り付けて動けなくする。一歩が出ない。前に進めない。その一歩が怖い。俺が保てない、
一体どれくらいそこで立ち尽くしていただろう。ふいに服の裾を引っ張られる感触に我に返った。引っ張られる感触を探せば小さな手があってその手をたどると京子さんの笑顔があって、俺は途端に嬉しくなってしまう。「敦賀さん、私はここにいてもいいですか?」「…えっ?」
と返した声はちょっと掠れてしまった。
「いえ、あの、ご迷惑…じゃないですか?」そんな可愛い事言われて拒否なんて出来ないよ、勿体なくて。
京子さんに向き直ってポンポンと頭を撫でながら彼女と目の高さを合わせる。「待っててくれる?」なるべく可愛げある仕草を試みて…、無理だな。なのに「はい」と返ってきた笑顔は破壊力絶大で、ここが社長邸の療養室であることが、ギャラリーがいる事が腹立たしい。
「敦賀さん、私、私、待ってますから、早く帰って来てくださいね。」そう言いながら恥ずかしそうに頬を染めるんじゃありませんっ!君はまたそうやって俺の理性を試しているのか!?本当にどうしてくれようか、この娘はっ!
これ以上この可愛すぎる生き物を直視していると場所も状況もどうでもよくなってしまうに違いない、危険すぎる。
「それじゃ、行ってくるよ。」
そういうと今度は今までの事が嘘のようにすっと体が動く。あれほど重く、地面に縫い付けられていた足が事も無げに俺を前に進ませてくれる。
後ろから聞こえる京子さんの「行っらっしゃい」の声には振り返らずに右手だけ振って答え、俺は扉の前で待っていた社長と部屋を出た。かんなふうに自分の意思でしっかり進んでいるのは初めてなんじゃないだろうか。もう怖くない、俺は敦賀蓮なのだから。
社長が俺には個別に話があると言った。昨日も少し俺の事情が複雑だという事は聞かされていた。今俺が着けているカラコンの事も昨日聞かされた。試しにカラコンを取ったらその下から碧眼が現れて俺は腰がぬけるんじゃないかと思うほどに驚いた。これ以上何を聞かなければならないのか。何を受け入れなければならないのか…。そんな考えが焦りと恐怖になり俺の身体を、気持ちを縛り付けて動けなくする。一歩が出ない。前に進めない。その一歩が怖い。俺が保てない、
一体どれくらいそこで立ち尽くしていただろう。ふいに服の裾を引っ張られる感触に我に返った。引っ張られる感触を探せば小さな手があってその手をたどると京子さんの笑顔があって、俺は途端に嬉しくなってしまう。「敦賀さん、私はここにいてもいいですか?」「…えっ?」
と返した声はちょっと掠れてしまった。
「いえ、あの、ご迷惑…じゃないですか?」そんな可愛い事言われて拒否なんて出来ないよ、勿体なくて。
京子さんに向き直ってポンポンと頭を撫でながら彼女と目の高さを合わせる。「待っててくれる?」なるべく可愛げある仕草を試みて…、無理だな。なのに「はい」と返ってきた笑顔は破壊力絶大で、ここが社長邸の療養室であることが、ギャラリーがいる事が腹立たしい。
「敦賀さん、私、私、待ってますから、早く帰って来てくださいね。」そう言いながら恥ずかしそうに頬を染めるんじゃありませんっ!君はまたそうやって俺の理性を試しているのか!?本当にどうしてくれようか、この娘はっ!
これ以上この可愛すぎる生き物を直視していると場所も状況もどうでもよくなってしまうに違いない、危険すぎる。
「それじゃ、行ってくるよ。」
そういうと今度は今までの事が嘘のようにすっと体が動く。あれほど重く、地面に縫い付けられていた足が事も無げに俺を前に進ませてくれる。
後ろから聞こえる京子さんの「行っらっしゃい」の声には振り返らずに右手だけ振って答え、俺は扉の前で待っていた社長と部屋を出た。かんなふうに自分の意思でしっかり進んでいるのは初めてなんじゃないだろうか。もう怖くない、俺は敦賀蓮なのだから。