療養室に入ると執事が手配していた医者が待ち構えていて、キョーコはリンゲルとビタミン剤、ほんの軽い安定剤を調合した点滴を施された。キョーコは熱が出て、38.6℃。この熱は身体疲労と過剰なストレスだろうと医者は告げた。今は何よりも休ませて精神的負担をかけないようにと医者が説明する。自分は内科医だから精神面での深いところまでは上手く解釈出来ないが、過呼吸症候群自体がストレスに起因するのだと説明した。類似した境遇に置かれ、身体症状が出ていない蓮も、今キョーコが受けている点滴を受けるべきだと医者が告げる。治療を頑なに拒もうとする蓮にローリーから社長命令として適切な処置を受ける旨を指示されて、蓮は渋々点滴を受ける事になった。別室でと言われたがどうしてもキョーコの傍を離れたくないと懇願し、キョーコが寝かされたベッドの横で椅子に座って受けることになった。キョーコの点滴は彼女の体力を考慮してゆっくり落とされている。蓮の方は蓮の申し出もありかなりハイペースで落とされた。蓮は先に点滴を終えてキョーコの眠るベッドの傍で座り込んでいる蓮の姿は痛々しいものだった。蓮はキョーコの右手に手を重ね、空いた手でキョーコの髪を優しく撫でる。「ごめんね、ごめんね、京子さん…」ずっとそう繰り返しながらキョーコの頭を撫でる蓮はまるで壊れたおもちゃだ。さっきまでキョーコをからかって楽しそうにしていたのに、キョーコの目が自分を映さなくなると途端にダメオに逆戻りしてしまう蓮をローリーは哀れに思う。
しばらくキョーコを髪を撫でていた蓮だったが、安定剤の効果で徐々に眠くなり始めた。それでも眠気に抗いながら必死にキョーコに謝り続けていた。が、近くに感じるキョーコの体温と軟らかい匂いが蓮のささくれだった心の眠りを運んでくる。とうとう抗う事が出来ずに蓮は意識を手離した。
二人が眠る姿はとても綺麗だ。二人とも無防備で幸せそうな寝顔。お互いの存在が二人に安心を与えている。記憶を失い、知らない者同士のはずなのに、既にかけ換えのない存在になってしまっている。気付いてないのは本人たちだけのようだが…。
ローリーはそんな二人をこれからどう支えるべきか、改めて考えなければならないと思う。
うちの子供達は本当に手がかかるな…。ため息混じりにそう呟くとお気に入りの葉巻をくわえて煙をたのしむのだった。
しばらくキョーコを髪を撫でていた蓮だったが、安定剤の効果で徐々に眠くなり始めた。それでも眠気に抗いながら必死にキョーコに謝り続けていた。が、近くに感じるキョーコの体温と軟らかい匂いが蓮のささくれだった心の眠りを運んでくる。とうとう抗う事が出来ずに蓮は意識を手離した。
二人が眠る姿はとても綺麗だ。二人とも無防備で幸せそうな寝顔。お互いの存在が二人に安心を与えている。記憶を失い、知らない者同士のはずなのに、既にかけ換えのない存在になってしまっている。気付いてないのは本人たちだけのようだが…。
ローリーはそんな二人をこれからどう支えるべきか、改めて考えなければならないと思う。
うちの子供達は本当に手がかかるな…。ため息混じりにそう呟くとお気に入りの葉巻をくわえて煙をたのしむのだった。