蓮とキョーコが応接間を訪れた事の報告を執事からうけ、ローリーは応接間に向かった。扉をそっと開けると、その事に気づきもせずにいちゃついている二人を見つける。「朝からご盛んなこった(笑)」と小さな独り言も二人には届かない。
しばらく眺めていたが急にキョーコの様子が変わった。蓮が心配そうに声をかけ始めたので、ローリーも見守る。キョーコの声はあまりに小さくてローリーの耳には届かない。蓮の慌てように違和感を感じたが、基本的には痴話喧嘩だとローリーは高見の見物だ。とうとう泣き出したキョーコに、必死になって謝り続ける蓮。今の蓮をファンが見たらイメージ丸つぶれか、新しいファン層拡大か、面白いギャンブルになるやもしれんと人の悪い笑みを浮かべる。
キョーコの体が蓮の腕に沈んで、事は収まると踏んだローリーが二人に近づき、そこで初めてキョーコの異変に気づく。
「蓮っ!離れろっ!」
「えっ?」
「ばか野郎っ!最上くん、意識ねえじゃねえかっ!」
キョーコを見やれば浅く小さく息を吸っているにも関わらず顔面蒼白で指先はうっすら紫色になりかけている。
「おいっ!だれかビニール袋をもってこいっ!」
程なく手渡されたビニール袋をローリーはキョーコの頭からすっぽり被せて口を閉じる。
「し、社長っ!何するんですか、京子さんを殺す気ですかっ!」
ローリーからキョーコを取り戻そうとする蓮を蹴りつけてローリーは冷ややかに蓮を見下ろす。
「『過呼吸症候群』だ。お前、最上くんになにをした!」
「いえ、…特にはなにも…して、な、いと…思い…ます。」
「そうか、ならいい。」
ビニール袋の中で二酸化炭素を与えられて呼吸が落ち着いたキョーコは、ローリーの腕の中で小さな寝息を立て始めた。蓮はキョーコを返せと言いたげにローリーを見上げたがローリーは大きく横に頭をふった。そのまま療養室にキョーコを抱き抱えて移動した。蓮も仕方なくローリーに付いていく。何も言わずにずんずん進むローリーに蓮は後ろからキョーコを返してくれと心底願いながら付いていく。ローリーは勿論その気はない。
ほんの数メートルの距離が蓮には遥か彼方に感じられた。
しばらく眺めていたが急にキョーコの様子が変わった。蓮が心配そうに声をかけ始めたので、ローリーも見守る。キョーコの声はあまりに小さくてローリーの耳には届かない。蓮の慌てように違和感を感じたが、基本的には痴話喧嘩だとローリーは高見の見物だ。とうとう泣き出したキョーコに、必死になって謝り続ける蓮。今の蓮をファンが見たらイメージ丸つぶれか、新しいファン層拡大か、面白いギャンブルになるやもしれんと人の悪い笑みを浮かべる。
キョーコの体が蓮の腕に沈んで、事は収まると踏んだローリーが二人に近づき、そこで初めてキョーコの異変に気づく。
「蓮っ!離れろっ!」
「えっ?」
「ばか野郎っ!最上くん、意識ねえじゃねえかっ!」
キョーコを見やれば浅く小さく息を吸っているにも関わらず顔面蒼白で指先はうっすら紫色になりかけている。
「おいっ!だれかビニール袋をもってこいっ!」
程なく手渡されたビニール袋をローリーはキョーコの頭からすっぽり被せて口を閉じる。
「し、社長っ!何するんですか、京子さんを殺す気ですかっ!」
ローリーからキョーコを取り戻そうとする蓮を蹴りつけてローリーは冷ややかに蓮を見下ろす。
「『過呼吸症候群』だ。お前、最上くんになにをした!」
「いえ、…特にはなにも…して、な、いと…思い…ます。」
「そうか、ならいい。」
ビニール袋の中で二酸化炭素を与えられて呼吸が落ち着いたキョーコは、ローリーの腕の中で小さな寝息を立て始めた。蓮はキョーコを返せと言いたげにローリーを見上げたがローリーは大きく横に頭をふった。そのまま療養室にキョーコを抱き抱えて移動した。蓮も仕方なくローリーに付いていく。何も言わずにずんずん進むローリーに蓮は後ろからキョーコを返してくれと心底願いながら付いていく。ローリーは勿論その気はない。
ほんの数メートルの距離が蓮には遥か彼方に感じられた。