ローリーの執事の青年に案内されて、蓮とキョーコはしばらく身を寄せる事になる部屋へ案内された。社と奏江も一緒に案内された。いわゆる『離れ』になるのであろうその建物は広々としたリビングと個室の寝室が幾つかある。リビングの隣にはかなり本格的なキッチンがあり、バーカウンターまで備わっている。そこに並ぶ洋酒を何気なく眺めた社と奏江は、これでもかと並ぶ高級酒のコレクションに驚いて目を見開いた。
「社様と琴南様はこちらで掛けてお待ち下さい。お飲み物をご用意いたします。」と大きなリビングのふかふかのソファに案内された。

「お二人はこちらでございます。敦賀様はこちら側のお部屋を、最上様はそちら側のお部屋をお使いください。」

青年からカードキーを渡され、指示されて二人はそれぞれ荷物を置きに部屋に入る。二人の部屋は隣同士で用意されていた。かなり広々とした個室に大きめのベッド。シンプルだがセンスのいい家具が置かれている。部屋の中にそれぞれサニタリースペースがある。大きな1LDKといったところだろうか。

リビングにはトイレやバスルームも複数あり、説明される事全てに二人は驚く。リビングでパーティを催したり客人が来た時に使いやすいようにだと執事の青年は説明した。

「何かご用やお困りの際はこちらのインターホンでお申し付けください。速やかに伺います。」と頭を下げる青年。

「あ、あの…。お名前はなんとお呼びすればいいですか?」遠慮がちにキョーコが聞くと青年は少し考えて「『あなた』とか『セバスチャン』でいかがでしょうか?」と答える。それは彼の名前なのだろうか?執事といえばセバスチャンといった感覚なのだろうか。キョーコは「あなたとかセバスチャンさん?」と首を傾げる。
青年は「いえ、そのどちらかで。他の呼び方でも私はかまいませんが…。」
「えっ?、ぁっ、で、では、セバスチャンさんで…。」と俯いてしまった。耳まで赤い。
「『さん』は不要でございますよ、最上様。」「…、はい…、セバスチャン。」
「はい、なんなりとお申し付けください。」
彼は深々と頭をさげ、夕食は7時に迎賓館でローリーと食べる予定になっているので、後ほど迎えに来る旨を伝えてゲストハウスから出ていった。

後に残された4人はなんとなくぽかんとして所在なく、食事までの一時間を落ち着かない気持ちで過ごすのだった。