松島は東京へ向かう車内で椹と話している。
「椹くん、君とこんなふうにのんびり話をするなんて何年ぶりだろうね。」
助手席で椹は海を眺めながら答える。
「そうだなぁ、新人研修終わってから俺達配属が別々だったから、もう10年は仕事以外で話す機会なんてなかったんじゃないかな。今も実は仕事中だし(笑)」
「全くだ。芸能界というのは忙しくてなんぼなわけで、暇だと困るんだけど、うちは忙しすぎるようにも思うよね。」
松島は赤信号で停まったついでに伸びをした。
「それにしても蓮と最上くん、一緒に記憶喪失だなんて、どこまで仲がいいんだか(笑)」
「いやいや、椹くん、それを言うなら似た者同士なんじゃないか?」
「まぁ、確かにあの二人は似てるよね。なんでも卒なくこなすくせに変に不器用で。なんでって思うところで怒ったり臍を曲げたり…。扱いにくいキャラの筈なのにすんなり馴染んでしまったりする。」
「お互いがお互いをよく理解しているのに変に誤解したり曲解したりで、もう周りをどれだけ心配させるんだと思ってたよなぁ。特に椹くんは最上さんのセクションだったから、蓮のセクションの俺より大変だったんじゃないか?」
「俺はそんなに大変だと思った事はなかったよ(最初はなんの呪いかと思ったけど)。今から思えば、あの子がこんな形で成長するとは思いもよらなかったしね。」
「しかし…、」
「そうだよ、これからどうするんだろう…。蓮も最上くんも今や超人気なんだよ。わが社の看板なんだよ。それがいきなり二人揃って記憶喪失とは…。」
「帰ったら社長の突飛な考えにまた振り回されるんだろうなぁ…。」
「松島くん、俺は東京に戻るのが怖い。」
「俺も怖いよ。まずはあのでっかいリムジンに乗らずにすんだ事をありがたく思うよね。」
記憶を失った二人、特に京子の精神的負担を考えて、迎えのリムジンの同乗者は極力少なめにした。松島が運転する車で来ていた事もあり、社と奏江をリムジンに乗せ、主任二人はのんびりドライブという状況。帰ればこれからの事で色々対策を立てるために東奔西走するだろう事は容易に想定できたため、ローリーからは夕方ローリー邸に来るようにと命を受けていた。それまでの短い休息なのだ。天気は快晴、車窓から見える海はキラキラと陽の光を映している。あの二人にもこんな穏やかな日が訪れる事を祈りながら帰る二人だった。
「椹くん、君とこんなふうにのんびり話をするなんて何年ぶりだろうね。」
助手席で椹は海を眺めながら答える。
「そうだなぁ、新人研修終わってから俺達配属が別々だったから、もう10年は仕事以外で話す機会なんてなかったんじゃないかな。今も実は仕事中だし(笑)」
「全くだ。芸能界というのは忙しくてなんぼなわけで、暇だと困るんだけど、うちは忙しすぎるようにも思うよね。」
松島は赤信号で停まったついでに伸びをした。
「それにしても蓮と最上くん、一緒に記憶喪失だなんて、どこまで仲がいいんだか(笑)」
「いやいや、椹くん、それを言うなら似た者同士なんじゃないか?」
「まぁ、確かにあの二人は似てるよね。なんでも卒なくこなすくせに変に不器用で。なんでって思うところで怒ったり臍を曲げたり…。扱いにくいキャラの筈なのにすんなり馴染んでしまったりする。」
「お互いがお互いをよく理解しているのに変に誤解したり曲解したりで、もう周りをどれだけ心配させるんだと思ってたよなぁ。特に椹くんは最上さんのセクションだったから、蓮のセクションの俺より大変だったんじゃないか?」
「俺はそんなに大変だと思った事はなかったよ(最初はなんの呪いかと思ったけど)。今から思えば、あの子がこんな形で成長するとは思いもよらなかったしね。」
「しかし…、」
「そうだよ、これからどうするんだろう…。蓮も最上くんも今や超人気なんだよ。わが社の看板なんだよ。それがいきなり二人揃って記憶喪失とは…。」
「帰ったら社長の突飛な考えにまた振り回されるんだろうなぁ…。」
「松島くん、俺は東京に戻るのが怖い。」
「俺も怖いよ。まずはあのでっかいリムジンに乗らずにすんだ事をありがたく思うよね。」
記憶を失った二人、特に京子の精神的負担を考えて、迎えのリムジンの同乗者は極力少なめにした。松島が運転する車で来ていた事もあり、社と奏江をリムジンに乗せ、主任二人はのんびりドライブという状況。帰ればこれからの事で色々対策を立てるために東奔西走するだろう事は容易に想定できたため、ローリーからは夕方ローリー邸に来るようにと命を受けていた。それまでの短い休息なのだ。天気は快晴、車窓から見える海はキラキラと陽の光を映している。あの二人にもこんな穏やかな日が訪れる事を祈りながら帰る二人だった。