「さて、と…。」
ローリーはゆたたりしたソファに腰掛け、マリアを膝の上にのせてそう切り出した。
「蓮、最上くん、よく帰ってきてくれた。ありがとう。社と琴南くんはご苦労だったね。」
四人を労う言葉にその場が和む。
「マリア、俺はこれからこいつらと大切な話があるから自分の部屋に行ってなさい。」
膝に乗せたマリアにそういうと膝から下ろす。そうは言われても不安をその顔に浮かべて『出ていきたくはない』と訴えるような眼で見上げてくるマリアのローリーは大丈夫だと頭を撫でる。そうすると今度は下を向いてしまったマリアにローリーは続けた。
「この先会えなくなる訳じゃない。蓮も最上くんも俺達には家族同然だろう?今は特殊な状況下で、俺すらまだちゃんと把握できてないんだ。だが、このまま放っておく訳がない。その辺りの話をするだけだからな。終わったらまた会えるし沢山話も出来る。大丈夫、時間はたっぷりあるんだ、マリア。」
ゆっくり大きな手で頭を撫でられながら言われたマリアはそれでも困惑していたが、「お祖父様、解りましたわ。マリアはお部屋でお待ちします。蓮様、お姉様、夕食は皆さんとご一緒できると聞いていますの。その時またお会いしましょう。」とにっこり笑って部屋の出口に向かう。扉が開かれ、部屋から一歩でて、部屋の中を振り返って心細げにローリーを見ると、大きく頷くローリーにまた可愛らしく微笑んで部屋を後にした。扉が閉まるとローリーの表情は孫娘を可愛がる祖父のそれから責任者のそれへと変わった。