サイド社

食事を終えて、俺達は目的地であるLME社長の宝田邸に向かった。一般常識をこれでもかという程逸脱した邸宅に蓮もキョーコちゃんも驚きに言葉を出せなかった。そして今、俺達四人は応接室のソファに座り、社長を待っている。蓮は普通を装っているが、今も多分かなり動揺しているのだろう。キョーコちゃんは所在なくキョロキョロとあちこちを見回して落ち着かない。そのしぐさはまりで仔リスだ。ホント、キョーコちゃんって可愛いなぁ。そんな事を思いながらキョーコちゃんを眺めていると、そのすぐ近くから鋭くて痛い視線を感じて体がビクッと跳ね上がる。れ、蓮だ。おいおい、俺を牽制するなよ。二人がまとまるまで俺がどれ程協力して骨をおって、やきもきしながら見守っていたのか、知らない訳じゃ…、知らないんだよな、今のお前は…。俺はずんと切なくなって小さなため息を溢した。
「蓮、俺は敵じゃない、安心しろ。俺はお前のマネージャーで、お前の事は可愛い弟で、キョーコちゃんの事は妹みたく思ってるんだ。」

その言葉に二人が同時に俺を見た。俺が笑って見せるとキョーコちゃんは少し頬を染めながらありがとうございますと小声で答えてくれる。蓮はそのキョーコちゃんを見て面白くなさそうな顔をしたが、もう一度俺を見て、はい。ありがとうございますと頭を下げた。でも、表情は複雑だ。困った奴だなぁ。記憶はなくなってもその独占欲は健在な訳か。これから先が思いやられるよ、全く…。

琴南さんは俺の隣で終始部外者を貫いている。彼女が一番賢いのだろう。

もうすぐ社長が現れたら、かれからの事で頭を悩ませる事になるのだから…。