サイドキョーコ

「敦賀さんは私よりも早く目覚めたし、私が眠ってる間もずっと起きていらしたでしょ?会社の方が来られた時も私の分まで対応してくださいましたし、相当お疲れなのでは?」

敦賀さんの隣に座っていると言う事実だけで、私の心臓はもう大騒ぎだ。敦賀さんの穏やかな息づかい、優しく安心できる香り、いつでも受け止めてくれそうな逞しい体…。どこをとっても完璧すぎる程完璧な男性。こんな素敵な人を今この瞬間独占している事に果しなく優越感を持ってしまう。そして、誰にも渡したくないと思ってしまう欲張りな私。隣で自分の事を盗み見ながらこんな欲張りで汚い事を考えている事を敦賀さんが知ったら私を嫌いになってしまうだろう。嫌われたくない。離れたくない。大好きだから、
色んな気持ちが込み上げてきて自分の頭の中では処理しきれなくなって俯いてしまった。今俯いちゃったら敦賀さんに失礼だと思うのに、一度垂れてしまった頭はもう自分ではあげられなくなってしまっている。

敦賀さんはそんな私に気づいて垂れてしまった頭ごと私の身体を引き寄せて、自分の旨の中に納めてしまった。私の耳に直接響く敦賀さんの心臓。あれ?なんだか速鐘を打つようなドクツクと脈打っている。私と同じくらい、いや、それ以上に速い…。
びっくりして顔を上げて敦賀さんを見ると私を見下ろしていた視線と合ってしまった。すると敦賀さんはちょっとばつが悪そうに視線をそらされた。

「ごめん。京子さんが可愛いものだからつい…。」
そういって少し横にずれて距離を取る。私はその距離が急に寂しくて敦賀さんをじっと見つめてしまった。なんだか泣いてしまいそうだ。

「あ、でも、気持ち良さそうだ。」
そう言ったかと思うと敦賀さんは私の方に倒れてきて、私の膝に頭をのっけてしまった。私は全身緊張で固まってしまって声さえ出せない。
「実は俺、京子さんが言う通り今日はかなり疲れてたみたいなんだ。でも、色々あって気持ちが高ぶっててね。でも、京子さんの傍だと凄く寛げるんだ。だから…、ひ、ざを…貸し…て、、、」

「敦賀さん、つ、るが、さん?」
少し身体を揺さぶっても敦賀さんからは反応がない。それどころか規則正しい寝息が聞こえてきてしまった。私は仕方なく傍らにあった毛布を敦賀さんにかけてそっと寝顔を覗き込む。
今日1日私を守ってくれたその顔はとてもあどけなく、まるで少年のように綺麗で、私はただみとれてしまった。