サイドキョーコ

ふと目が覚めた。眠りについたときはまだ部屋は明るかったはずなのにもう真っ暗になっている。この暗さに目が慣れるまでまんじりともできなかった。やっと少しずつ目が慣れてくると、床灯台の上でスタンドが頼りない明かりを点している。急に不安になる。つ、敦賀さんはっ?どこ?いないの?私はまたおいてけぼりなの?
ガバッとベッドの上で身を起こし、周りをキョロキョロ見渡すと、程近いところに置いてある三人かけくらいのソファに人影を見つけた。その人影が敦賀さんであることを確かめようと、ベッドを降りて近づく。この端整な顔立ち、長い睫毛、綺麗な鼻筋、形よく薄い唇…。間違いない、敦賀さんだ。安心して床にへたりこんでため息をつく。
「よかった。また置いてけぼりかと思っちゃった。」
また?またって何よ、私(汗)
思わず零れる自分の言葉に驚いていると、敦賀さんの眉間に皺が寄り、うっすらと眼が開かれた。

「…、ん~、うぅぅぅぅん。あ、京子さん、目が覚めちゃったの?」敦賀さんは体を起こして軽くのびをして、その大きな手で私の頭を優しく撫でてくれる。私はこの大きな手が大好き。全ての事から私を守って、私を導いてくれる大きな手。その温もりも感触も全部大好き。
敦賀さんに促されてソファの端っこにちょこんと座ると敦賀さんと横並びでちょっぴり緊張してしまう。なんだかすごく恥ずかしくて俯いてしまう私を敦賀さんが心配げな顔で覗き込みながら「大丈夫?」と聞いてくる。「…はい、大丈夫、です。」なんだかしどろもどろな私を見て、敦賀さんはクスッと笑って、また頭をポンポンと撫でてくれた。
「夜更かしはお肌の敵だよ、お姫様。」笑いながら言う敦賀さんに「私はたっぷり眠らせて頂きましたよ。それより起こしちゃってごめんなさい。いや、それよりなんでソファなんかで眠ってるんですか?」と聞いてみたら、「京子さんが目覚めた時に、俺がこの部屋にいないと泣いちゃうかなぁと思ってね。」と少しおどけてウィンクまでしちゃう始末。
「私、そんなに子供じゃありませんっ!」と唇を尖らせてそっぽを向いたら、また耐えきれないといった様子で失笑されてしまった。もぉっ!失礼しちゃうわよ、敦賀さんっ!

「俺はまだ眠いかなぁ。」

敦賀さんは軽くアクビをした。その仕草まで絵になる人だなぁとみとれてしまった。