サイド蓮

俺は京子さんが眠りに落ちたのを確認してから入口付近に立っている男性三人に視線を映した。

「彼女は俺より後に覚醒したんですが、目覚める直前にかなり辛い夢を見たようで、ずっと不安を払拭出来ずにいます。目覚めた時に最初に見たのが俺の顔で、そのせいか俺の傍を離れようとはしません。眠っている間なら離れても大丈夫だと思いますが、彼女が次に目覚めた時に、傍に俺がいないとまたパニックを起こす危険があります。看護士さん、彼女はどのくらい眠っていますか?」
「京子さんが飲んだのは睡眠薬ではありません。あくまで安定剤。しっかり眠らせる為には遅効性の睡眠薬を一緒に処方するのですが、彼女には安定剤のみですので、最長二時間くらいかと思われます。ただ、不安定な状態なので、出来れば一時間くらいで様子をみてあげていただけたほうがよいと思います。」
看護士さんの的確な示唆に俺達は頷き、「ありがとう」というと、「いえ。色々と大変かと思いますが、敦賀さんがしっかり京子さんを支えてあげてください。」と笑顔で返された。そして看護士さんは静かに病室を出ていった。これが白衣の天使というやつか。その笑顔一つで不安や恐怖を癒してしまう。

俺達は眠っている京子さんを一人病室に残して俺の病室で話す事になった。タイムリミットは一時間。だが、俺も出来るだけ早く話を切り上げて彼女の傍に戻って、彼女の不安に震える手を握ってあげたいと思いながら、何度も振り返りつつ病室を後にした。