サイドキョーコ

「気分は悪くない?」と穏やかに聞いてくるその人に少し微笑んで「はい、大丈夫です。」と小さく答えた私。「そう、よかった。」と今までより優しく笑いかけてくれるその人に『貴方はだれ?』とか『私の事ご存知ですか?』なんで絶対にきけないわ。いったいどうすればいいんだろう…。

ベッドに横たわったまま頭の中でぐるぐると考えあぐねていると、その人がクスクスと笑い始めた。
「あの、どうかしたんですか?」と問えば、「百面相」、「えっ、なんですか?」と聞き返せば「いや、なんとなくパニクってるみたいだから…。」と返ってくる。
(多分)初対面なのに何故か二人っきりで、しかもこの人は私にごく自然に触れて来ていた。でも、私はそれが嫌じゃない、なんで?
今も、この人が笑っている理由すら解らないけど、この人が笑っているだけで私まで穏やかな気分になっている。自分の事もこの人の事もさっぱり解らないのに、なんでこんなに穏やかなんだろうと思うほどに。

私は視線をこの人から外して周りをキョロキョロと見回してみる。白い天井、白い壁。小さなテーブルとソファベッド。手元を見ると点滴が施されている。

「…っ、病院、…で、すか?」
その言葉にその人の肩が小さく反応した。「そうだよ。覚えてる?」と心配げな顔で覗きこまれる。あの、その端整な顔を必要以上に近づけないでください、心臓によろしくありませんからっ!(汗)