サイドキョーコ

安心したら、ついさっきまで眠っていたはずだったのにまた私は意識を手放してしまったらしい。再び目を開けると、その言葉の通りに端整な顔はそこにあった。その事がただ嬉しくてまた涙が滲んでくる。

あ、私、また泣いちゃう。今ないちゃったらこの人を困らせてしまう…。

そんな私の心を読んだのか、その端整な顔の形のいい唇が言葉を紡ぐ。
「大丈夫。俺はここにいるよ。泣きたい時は無理に我慢せずに泣けばいい。俺はちゃんとここにいるから。」

その言葉に私の鼓動が大きく跳ねた。この人に、私の煩く打ち鳴らす心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うほどに、このドキドキが耳障りだ。でも、端整な顔のこの人は口許に軟らかい笑みを湛えたまま私の髪を優しくすいていてくれる。なんでこんなに安心してしまうんだろう。知らない人なのに…。・・・・、えっ?

知らない…人?

あれ?

この人は…、誰?

それ以前に…、私の名前は?

私はここに来てやっと大事な現実に気づいてしまったようだ。