サイドキョーコ
目の前に、とてつもなく端正な顔があった。長い睫毛、黒曜石のような瞳。堀の深い顔は鼻筋がすっとしていて、形のいい薄い唇は少し驚いたような、戸惑うような形をしている。もう一度その瞳に視線を移すと、優しい眼差しに全てを見透かされてしまうのではないかと思うほど真っ直ぐに見つめ返されている。夕方が近いのか、部屋にはオレンジ色の光が差し込んでいて、その光を映してその瞳は本当にキラキラしていて、つい、口にだしてしまった。
『あなた、妖精さん?』
その綺麗な瞳は一瞬驚いて、見開かれ、でも、すっと細められた。
「残念だけど、俺は妖精じゃないよ。お目覚めですか、お姫様?」
優しい微笑みと一緒に返された言葉に、ちょっとがっかりしてしまったけれど、その声音の心地よさに安心を覚える。私はさっきまで怖い夢をみていた。そしてまだ夢の続きをみているのだろうか…?
それならもう一度目を閉じたりこの綺麗な人は居なくなってしまうのかしら?
そんな不安が沸き上がってきて、涙になって溢れてしまった。
「どうして泣くの?」
「…怖いの…。」それしか言えない。
「俺はここにいるから、君が目を開けても消えたりはしないから泣かないで?」
そういいながら私が流した涙をまた拭ってくれる優しい手。さっき感じた暖かさはこの手だったんだと気付く。すると今度は違う意味の涙が溢れてきて止められない。
「クスッ、俺のお姫様は泣き虫なんだね。」とおどけるような口振りで言いながら、反対側の手で私の頭をそっと撫でてくれる。大きくて暖かくて安心できる手の感触。ずっとこのままこの手を独り占めしていたいと思ってしまう。なんだろう、この胸の深い所に灯る温かい気持ちは…。
目の前に、とてつもなく端正な顔があった。長い睫毛、黒曜石のような瞳。堀の深い顔は鼻筋がすっとしていて、形のいい薄い唇は少し驚いたような、戸惑うような形をしている。もう一度その瞳に視線を移すと、優しい眼差しに全てを見透かされてしまうのではないかと思うほど真っ直ぐに見つめ返されている。夕方が近いのか、部屋にはオレンジ色の光が差し込んでいて、その光を映してその瞳は本当にキラキラしていて、つい、口にだしてしまった。
『あなた、妖精さん?』
その綺麗な瞳は一瞬驚いて、見開かれ、でも、すっと細められた。
「残念だけど、俺は妖精じゃないよ。お目覚めですか、お姫様?」
優しい微笑みと一緒に返された言葉に、ちょっとがっかりしてしまったけれど、その声音の心地よさに安心を覚える。私はさっきまで怖い夢をみていた。そしてまだ夢の続きをみているのだろうか…?
それならもう一度目を閉じたりこの綺麗な人は居なくなってしまうのかしら?
そんな不安が沸き上がってきて、涙になって溢れてしまった。
「どうして泣くの?」
「…怖いの…。」それしか言えない。
「俺はここにいるから、君が目を開けても消えたりはしないから泣かないで?」
そういいながら私が流した涙をまた拭ってくれる優しい手。さっき感じた暖かさはこの手だったんだと気付く。すると今度は違う意味の涙が溢れてきて止められない。
「クスッ、俺のお姫様は泣き虫なんだね。」とおどけるような口振りで言いながら、反対側の手で私の頭をそっと撫でてくれる。大きくて暖かくて安心できる手の感触。ずっとこのままこの手を独り占めしていたいと思ってしまう。なんだろう、この胸の深い所に灯る温かい気持ちは…。