サイド蓮

「……綺麗…だ…っ」
初めて見た彼女は本当にその一言でしか表現できなかった。透けるような肌に小さく整った唇。長い睫毛に堅く閉ざされた瞼。眠っている表情は無防備であどけない。
この瞼が持ち上がったら、いったいどんな瞳が何を語ってくれるのか。その瞳は俺を映してくれるのだろうか、いや、映してほしいと心の中で懇願してしまう。

彼女の点滴のチェックをし終えた看護士さんが、俺を見てクスッと笑う。
「敦賀さん、なにご自分の恋人にみとれているんですか?それに『綺麗だ』なんて当たり前じゃないですか、京子さんですから。」
「はぁ…」と曖昧に返事をかえしながら、俺は少し頬が熱くなるのを自覚した。だが、看護士さんに冷やかされても尚、彼女から眼が離せずにいた。

この時の俺は素直に『一目惚れ』を信じられた。