大切なもの (3)

『朝から蓮と連絡がとれないんです。キョーコちゃんとも同様に…。』敏腕マネージャーの社にはなかなか見られない動揺する震えた声が電話越しに届く。
社長であるローリー宝田は松島・椹両主任を呼び、今後の対策を、と示唆する。
愛用の葉巻をくわえながら、「おい、蓮、いったいどこで何してやがる。大切なものが出来たばっかりなんじゃないのか？」と声に出して言ってみる。が、勿論返事は返らない。ともかく、探すしかない。蓮やキョーコは黙って仕事に穴をあけたり消息を断つような奴ではないと、ローリーだけでなく、二人の人となりを知っている者は解っているから、この状況を心配せずにはいられない。
マスコミ関係には、敦賀蓮、京子は急病のため、休養と療養を兼ねてオフを取る旨、正式にLMEから発表された。目先の対策にはこれが一番妥当ではあるだろう。そして皆それぞれが不安な時間を過ごしている。