大切なもの (1)

ﾌﾟﾛﾛｰｸﾞ(みたいなもの)
蓮とキョーコは幸せいっぱいだった。

蓮はかなり長い間絶賛片思いだったキョーコをやっとの思いで口説き落とし、今までにない幸福と充実を味わっている。

キョーコといえば、自分の隣で穏やかに微笑む美貌の男性が自分だけを見て、自分の一挙一動に一喜一憂する姿を目の当たりにして、かなりうろたえている。だが、手の温もりと優しさを信じてみよう、いや、信じたいと思って、蓮の気持ちを受け入れた。

そして、二人は人生で一番楽しい時間を過ごしている。

二人が二人とも闇を背負っていた。その闇に何度となく飲み込まれそうになった。そしてお互いが相手をその闇から救いだした。そして今の二人がここにいる。その二人の姿に誰もが祝福し、二人の存在、周囲の人々にまでも幸福を運んでいる。なんと素敵なカップルなのかっ！
愛の伝道師であるローリーも諸手を挙げて祝福している。そしてこのまま素敵な日々が始まる…と誰もが思っていた。否、始まるはずだった。

その不慮の事故はそんなある日に起こってしまった。