事務所の一室から外を見ていた。昼から降りだした雨に、街には色とりどりの傘の花が咲いている。

俺は駅からの通りを眺めていた。すると、俺の待ち人が頭にタオルを被ってこちらに走ってくるのが見えた。天気予報は雨が降るなんて言ってなかったもんな…。

その姿を見るだけで自然と変な力が抜けて、一緒に疲れもどっかに行ってしまう俺はもう末期症状なんだろうな。

俺はタオルを手に持って彼女の向かっている先、つまりはこの事務所のロビーに向かう。

雨足が強いからか、彼女は下を向いたまま走ってくる。あと少し、もぉ少し。
俺は彼女が走ってくる軌道を読んで彼女が走り込んで来る正面に立った。彼女はまだ気づかない。

ドン

彼女は俺にぶつかってやっと止まった。

『ご、ゴメンなさい!ちゃんと前を見ていなくて…』と下がろうとする彼女を片手で引き留め、もう片方の手で持っていてタオルを彼女の頭にかけてやる。

『へっ?』と見上げる彼女の顔は凄く可愛くて、思わず抱き締めてしまいたくなる。その気持ちを誤魔化すために濡れた頭をゴシゴシと少し乱暴にタオルで拭くと、『じ、自分でやりますから(汗)、あ、ありがとうございます(汗)』と俺の手から逃げるように一歩下がってしまった。ちいっ(笑)

『なんかこのタオルふわふわぁ、しかも敦賀さんの香りがしますね。』頭にかけたはずのタオルに顔を埋めて彼女がそういった。今○のタオルは彼女に気に入っていただけたようだ、よかった。

さぁ、早く中に入って服を乾かさなくちゃ風邪ひいちゃうよと、さりげなく彼女の腰に手を回してエスコートする。素直に着いてくる彼女は本当に可愛くて困ってしまう。

雨降りもたまにはいいな。そう思いながら彼女と歩く俺は今日1日上機嫌だ。