『あ、これ、京子ちゃんには珍しいかも?』と北山さんが何かを見つけたようだ。『へっ?』とそちらに目をやると、北山さんの右手には赤いキーケースが握られている。『あ、それは…』私の小さな声は届かない。
『ねぇ、藤崎ちゃん、多分これ京子ちゃんの唯一のブランドものよ!』『えっ?どれどれ…、エピじゃないですか(笑)』
『『京子ちゃん、まさかのヴィトン派?』』
なぜそこでお二人はユニゾンなさるんですか?
『いえ、それは頂き物で…『それも丁寧に使ってるのね、しかもかなり使い込んでる!』『本当だ、凄く大事にしてるのね。こういうのが大切なものって感じで素敵よね(笑)』…あ、ありがとうございます。』

『えと、それは頂き物で、小さめだから持ちやすいからって下さったんです。』キーケースを受け取り、両手でそれを包んで胸のところに持っていく。このキーケースをいただいた時の敦賀さんの言葉が蘇る。
『京子ちゃん、顔真っ赤よ、何を思い出したの?それ、彼氏からのプレゼントだったりしてねぇ(笑)』
えっ、あれ?
いけない、仕事中なのに一瞬トリップしてしまった。
『そ、そんな、彼氏とかじゃないですよ、恐れ多いですっ!』
『そんな真っ赤な顔で否定しても説得力ないから。おじさん、京子ちゃんの彼氏が羨ましいな。プレゼントしたものをこんなに大事に使ってもらえるんだから。』
『そ、それは…、下さった方はこの子と出会った時に一目惚れだったそうなんです。それでですね…、私も、いただいたときに一目惚れで……ゴニョゴニョ…』