たこ焼き…（１）

蓮から『何か関西の食べ物を』と言われたキョーコは敬愛する先輩の為に関西ならではの楽しめる料理を考えていた。キョーコの出身地である京都と言えば古都。伝統だとか文化とか、色々と有名なものがある。

しかし…

先輩である蓮は、その立ち位置と仕事柄から、キョーコに改めて振る舞われるには及ばず、あらゆる京料理を経験済みと思える。それと、食を『楽しむ』という点では何か違うコンセプトを提供したいとキョーコは頭を悩ませていた。

そんなある日、キョーコはきまぐれのロケで食い倒れの街大阪に出向く事となった。ブリッジの三人は出身が顔面という事と、かなり街を知り尽くしている事もあり、新幹線で新大阪駅到着直後からキョーコにガイドブックにはなかなか載らない名所を案内すると、意気揚々とキョーコを連れ出した。プロデューサーもはめを外さない事と騒ぎにならない事、ロケの時間に遅れない事を条件に四人に自由時間を与えてくれた。

昼ごはんは通天閣を西に降りたところのモツ鍋屋さん、そこから国道に出てミナミ方面に歩く。見慣れない景色に驚きを隠せないキョーコをブリッジの三人が三方からSPよろしく囲む形で歩く。

光『キョーコちゃんって関西ゆぅても京都にいたんやし、大阪のこの辺はあんまりけぇへんのやろ？』
キョーコ『はい、初めてです！』
光『ほな、やっぱりあそこには連れていっとかなあかんなぁ。』
他の皆が頭に［？］マークをつけている事を全く気にする素振りもなく先頭を切って進んでいく光。
光がキョーコを連れて行ったのはなんと道具屋筋。ここには色々と業務用の調理器具なんかがあるからお勧めとばかりにゆっくりお店を一軒ずつ眺めて歩く。

キョーコがふと足を止めたお店。キョーコの視線は一点に注がれ、動こうとしない。ブリッジの三人が心配そうにキョーコを見守るが、その事にキョーコは気づく由もない。焦れた光が声をかける。『キョーコちゃん、どぉしたん？何か気になるものでもあったの？』
その言葉にはっと我に帰ったキョーコは頬を少し染めて恥ずかしそうに俯いた。先ほどから、キョーコの熱い視線を受けていたのはたこ焼き機。屋台等で見かけるような大きくてガスコンロの上に鉄板が乗っているタイプのもの…。

ブリッジの三人はなんとなく納得した気になる。自分建には当たり前にあるものがキョーコには珍しいものなのだ。