「失礼します。」
音を立てないように気を配りながら白い引き戸閉めて
私はいつもの席につき、視線のやり場に困ったあげく、小さな卓上カレンダーを見つめる羽目になった。
夏休みの校舎はあっけらかんとしていて
私がこの部屋の扉をたたいたことをめったな人に知られる心配はなさそうだ。
それにしても暑い。
セミの声が頭に響いてもう痛いくらい・・・
「ひさしぶりね、髪きったのかな?」
いつものように穏やかな声で笑いかけてくれたのは、杉野先生といって
わたしにカウンセリングを施す心理臨床士だ。
すらっと背が高くて
でも猫背で
長い手足をもてあました
なんだかアンバランスな体つきな女性というのが第一印象。
そしてこの人は、おんなじ台詞を何度も言う。
なんどもなんども
自分で気づいてないのかな?
それともそれがカウンリングの決まり文句なのかな?
「大変だったわね。」
「よく頑張ってるわ。」
それにしても
なんでこんなことになったんだろう・・・
私は先月から心理カウンセリングを受けている。
週に一度。50分間。
なんでっていえば
ともだちに紹介されたからなんだけど
ともだちがカウンセリングをすすめるほどに私は浮かない顔をしてたのかしら。
病的に見えるのかしら。
とにかく
私が通う教育大は学生サポートシステムが整っていて
学生であればだれでもプロの臨床士のカウンセリングを受けられるらしい。
カウンセリング・・・
私は病気になっっちゃったんですか?頭がおかしいですか?
ってだれに質問してるんだろう。
あぁ・・・また気分が重くなってきたぞ。
でも
間違いなくいえることは
今年の夏
私の心と体の歯車がくるってしまって
とにかく
「調子がわるい。」
その結果なのか
そもそもそれが原因なのかはわからないけど
わたしは病的に恋をしている。
息ができなくなるくらいに苦しい恋なんて
ばかばかしい。
はやくやめたい。
助けて。やめたいの・・・