満員の 千代田線の ドアが開くと
次から 次へ
次から 次へ
人が 吐きだされて
寸分の狂いもなく すべり込んで来た 小田急線のドアが
また それを 飲みこんだ

この 恐ろしい数の 人間が
どうやってだか 
電車の箱の中に しゅーっと 収まってしまう
アメーバ みたいに


19:47 代々木上原発
相模大野行 各停

仕方なく 私も
満員電車に 飲みこまれる

グチュー べたーっ ギシギシ
暑っつー オッサンくっさー
わき腹のカバン 痛ったー
みんな
汚れた空気を できるだけ ちょっと吸って
一日の疲れを 放射しながら
目をつむって パクパクする
瀕死の金魚 みたいに


私は
自由な 目だけを ギョロギョロさせて 思う

 あの人に 会える

背の高い 爽やかな青年は
今日も いつもの駅から 乗ってくるかしら
今日も 優しく 微笑んでくれるかしら

満員電車の中で
私の 胸は 高鳴る


このアメーバ電車が

過ぎてしまった 時間を超えて
過去に向かって 走ってくれたら