第45章 隠してきた気持ち
ここ数か月、私はずっと走り続けている。
仕事では次々と新しい案件を抱え、
ちゃちゃの通院や抗がん剤治療に合わせて予定を調整する。
延期になれば、また仕事を組み直す。
治療費が惜しいと思ったことは一度もない。
治るなら、いくらでも頑張れる。
ちゃちゃのこと。
ぷーとなるのこと。
仕事や生活の事。
気づけば、頭の中は
「やらなければならないこと」
でいっぱいになっていた。
そんな朝だった。ちゃちゃのご飯を量り終え、
準備ができた、その一瞬。
隙を見たぷーが、ちゃちゃのご飯を食べ始めた。私は反射的に、ぷーを突き飛ばした。
そして今度は、なかなか食べようとしないちゃちゃに、
「早く食べなよ!」
そう何度も強い口調で言ってしまった。
ちゃちゃは驚いたように私を見て、
少し怯えた顔をしていた。
その表情を見た瞬間、
ぷーの腰は大丈夫だっただろうか。
ちゃちゃは怖かっただろうな。
そう思うのに、怒りだけはすぐには収まらなかった。
たったこれだけのこと。
普段なら怒るはずもない些細な事。
何も思いどおりにならない毎日と、張りつめ続けていた自分自身に、余裕をなくしていたのかもしれない。
最近になって、少しだけ1人でスタバへ行ってのんびりしたい。
カフェを巡ってみたい。
Amazonで、自分のものを選んでみたい。
そんな小さな楽しみを思い浮かべられるようになっていた。
でも、ちゃちゃの病気が分かってから、私はまた自然とそうはできないでいた。
だけど、これでいい。
時間を戻せても、私はきっと、また同じようにちゃちゃを選ぶだろう。
何事もなかったように寝息を立てる姿を見ていると、涙が溢れる。
ちゃちゃは今日を生きて、私は、不安や責任の中で、一日を懸命に生きている。
胸を張れるような一日ではない。
それでも、この日のことを残しておこうと思う。
こんな日があったことも、きっと今の私たちが歩いてきている道のひとつだから。