小見出しにあるように、家を興すには積小為大を通してやるのが望ましいと尊徳は考えていました。興味深いのは、どうしてそうすべきなのかということを説明する事例の方です。
「万巻の書物があったところで、無学の者にはしようがない。隣に金貸しがいたところで、こちらに借りる力がなければしかたがない。向いに米屋があっても、銭がなければ買うことはできぬのだ」(160-161ページ)
これらの事実から、尊徳は書物を読もうとするなら、いろはから習い始めるのが良いといい、家を興そうと思えば小から積み始めるのが良いと言います。
今回の話で気づかされるのは、何かを為そうした時に、誰もがそれをするのに必要な条件や環境を問題にすると思われますが、何よりも大事なのは本人自身がそれをする器になっているかどうかという点が抜けてはならないということです。初めから何でもできる人はいないわけですから、何かを為そうとする時は小さなことから始めるしかないと言えます。そういう意味合いで積小為大を尊徳が重視していたということであれば非常に納得がいきました。