産婦人科から帰ってきました。
家を出る前にお腹にいたはずの赤ちゃんは、もういません。
一つの命がなくなりました。
とても小さくても生きていたのに…
その子にも未来があったはずなのに…
病院の明細書は、中絶の証拠となるので捨てたかったのですが、何かあった時のためにとっておくことにしました。
旦那さんが、私の医療明細書を見ることはまずないと思います。
中絶費用だけで112,000円。
その前の診察も含めると、もっとかかっています。
しかも自費です。
彼と不倫を始めて、これまでいくら使ったんだろう。
会うために新幹線を利用するので、往復2万。
食事代、ホテル代は割り勘で一人およそ5千円。
一回会うのに2万5千円。
10ヶ月間続けていました。
旦那さんが、それを知ったらどう思うでしょうか。
私は彼を好きだから、体だけの関係とは思いたくありません。
妊娠がなければ、10月も11月も会えてるはずです。
妊娠を伝えてからの彼からのメールは、正直私への愛を感じられるものではありませんでした。
手術を終えても私は、彼を失いたくない気持ちでいっぱいでした。
彼はメールで、
“次会った時に水子供養に一緒に行こう”
と言ってくれています。
―次があるんだ!!また、彼と会えるんだ!!―
でも彼とのことは、流れに身を任せるつもりなので、自分から何かのアクションを起こすのはやめようと思っていました。
薬を飲み忘れないように、薬袋から薬を取り出しリビングのテーブルの上に置いておきました。
嫌でも目に入る“妊婦厳禁”の文字。
旦那さんに気づかれることなく終わった“妊娠と中絶手術”。
旦那さんが私に無関心なのか、男性は普通、気づかないものなのか。
術後の痛みもほとんど感じなかったので、掃除機をかけていたら、旦那さんが帰ってきました。
私は朝、旦那さんには適当な理由をつけてすっぴんで産婦人科へ向かったのですが、旦那さんが帰ってまもなくして、
『どこか行ってきたの?』
と聞いてきました。
どこ行くかは朝言ったはずなのに、と思いながら、朝と同じ回答をしました。
すると、テーブルの上に置かれた産婦人科の薬が私の目に入りました。
―しまった!!―
旦那さんはそれを見たんだと思います。
また何か聞かれるかもしれない。
そしたら何て答えよう。
彼と不倫を始めて、私は繰り返し旦那さんに嘘をついて出かけていました。
気づけば平気で嘘をつけるようになっていました。
この不倫を続けると、お金がかかるだけでなく、嘘をつき続けることにもなります。
旦那さんに申し訳ない思いから、不倫をやめなきゃと思ったことは実は何回もあります。
でも、彼と会うと楽しくて、次また会いたくなるのです。
その日の夜は旦那さんと二人で外食に行きました。
悪阻によってずっと食事がきちんとできていませんでしたが、中絶手術をしたこの日もやはり、ほとんど食べられませんでした。
まだ体は、妊娠してる状態から、完全に元に戻ってないようです。
急激には戻らないんだなと感じました。
ただ、あんなに痛かった胸は、もう張っていなかったし、吐き気もなくなっていました。
夫婦の話になりますが、私は旦那さんと毎日一緒にお風呂に入っています。
結婚してもうすぐ3年ですが、新婚の時からずっとです。
この日、私が産婦人科の先生にした唯一の質問、
“入浴はできますか?”
はそのためでした。
突然私が“今日は一緒にお風呂入れない”と言ったら不自然だろうなぁと思ったからです。
でも、旦那さんのことだから、そう言ったとしても変に思わないかもしれませんが。
先生から入浴できると言われたので、この日も旦那さんと一緒に湯船に浸かりました。
手術による出血は、この時点でほぼありません。
彼とはこの日、何度かメールのやり取りをしていますが、私は明るくつとめていました。
このブログに書いている気持ちをそのまま彼にぶつける勇気がありません。
妊娠がわかってから、彼のメールはずっとかたかったのですが、手術を終えて私が明るく振る舞っていたからか、彼は冗談めいたことをメールで入れてきたのです。
それは、私が“妊娠できる体であること”をからかうものでした。
私が本心を見せないのがいけないのかもしれませんが、中絶手術に関する彼と私の温度差に、ショックを受けたのは事実です。
―中絶により傷つくのは女性―
この言葉が全ての男女にあてはまるのか、わかりません。しかし、私と彼の間にはあてはまるようです。
こうして、中絶手術の1日が終わりました。