教科書検定作業 自由な議論と透明性の調和図れ(2月29日付・読売社説)

 教科書検定の作業で最も大事なのは、不当な干渉を排除することだ。議論の過程を透明化するとしても、そうした配慮が不可欠だろう。

 教科書検定のあり方を改善するため、文部科学相の諮問機関、教科用図書検定調査審議会で検討が始まった。昨年、沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定で「審議経過が不透明」などの批判が出たのを受けたものだ。

 学習指導要領改定に伴う検定基準見直しとともに、夏までに結論を出す。

 教科書の記述が適切かどうかを審査する同審議会は、総会をはじめ、教科ごとの部会、その下の小委員会も、すべて非公開になっている総会だけは、発言者を匿名にした議事の概要が作成され、検定後にホームページで公表されるが、部会、小委員会は議事概要もない。

 文科省は、委員が静かな環境の下で自由に意見を交換し、審議を円滑に進めることなどを理由に挙げている。

 2000~01年、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した中学歴史教科書の申請本が外部に流出し、検定の合否も決まっていないのに、中国、韓国政府が強く反発した。

 この教科書は検定に合格したが、審査の過程で不当な干渉や圧力が加われば、検定の公正さや中立性が脅かされる冷静な議論を交わせる環境を確保することは、極めて大切なことだ

 現在は、教科書会社の申請本と検定済みの見本、検定意見書と修正前後の対照表が、検定後に公表される。

 ただ、審議経過が一切非公開のため、検定意見書や検定済みの見本などを見ても、結論に至る過程はわかりにくい。

 部会や小委員会の議事概要を検定が終了した後に公表することを、検討してもよいのではないか

 適切な事後検証は、次回の検定に生きるはずだ。例えば、文科省職員である教科書調査官の調査意見書を基に、委員がどんな議論をしたのかが点検できる。調査官や委員に、緊張感や責任感を一層持ってもらうことにもつながる

 検定では、複雑な事象やさまざまな議論がある問題などについては、必要に応じて専門委員が選ばれ、調査官が意見書を作る際の資料を提供する。

 沖縄戦の集団自決をめぐる申請本の記述には、集団自決の際に日本軍の強制があったかどうか定かでないとして、検定意見が付けられた。沖縄戦の専門家の意見も聞いていれば、検定意見により説得力を持たせることができただろう。

 専門委員の有効な活用方法も含め、改善策を検討してもらいたい。