画面中央の木製棚の上へ14個の林檎は無造作的に配置されているようで、画面右側に置かれる青太縁の皿とその上のビスケットと見事に呼応しており、極めて単純ながら観る者に心地良さすら感じさせる絶妙な静物構成には画家の天性を感じずにはいられない。

  また色彩表現においても赤や黄や茶色など豊かな暖色でまとめられる林檎や木製棚、それらと色彩対比的な青皿や緑地の壁、そして(やや奇抜ながら)アクセント的な桃色のビスケットなどにセザンヌの感性の高さと色彩に対する強い執着を見出すことができる。