夜の砂漠で深い眠りにつくジプシー女。本作に描かれるのは、夜の砂漠で深い眠りにつくジプシー女とそれに寄る一匹の獅子(ライオン)の姿で、19世紀アカデミーを代表する画家ジェロームの作品に典拠を得て制作された。

 女の匂いを嗅ぐ獅子(ライオン)。画家自身の言葉によれば「放浪する黒人の女が、水差しを傍らに、疲れ果て深く眠っている。その時、一匹の獅子が通りかかり彼女を見つけ匂いを嗅ぐが、決して喰いつくわけではない。それは非常に詩的な月の光のせいなのだ。」と獅子とジプシー女の関係性を解説している。

 詩的な光を放つ(反射する)月。ルソーは己が抱えていた多額の借金の返済を目論み、故郷ラヴァルの市長に本作の寄贈(買取)の嘆願する手紙(本作品の解説も記されている)を送っているが、その目論みが叶うことはなかった。