思い出
私は寝ぼけて、「犬がまだ生きてる」と思いこんでしまう。
だんだん目が覚めるにつれて、「そういえばもういない」と思い出す。
「もういない、もういない・・」と繰り返し、自分に言い聞かせるようにしていると意識がはっきりしてくる。
そんな朝がたまにある。
全然良い飼い主ではなかった。散歩も主に母がやってたし、犬も母と散歩するのが一番好きみたいだった。
その日、私は前夜から原因不明の腹痛で、朝になったら病院に行くつもりで早くから寝ていた。
ふとんの中で、うなっていると、いつも一階で母と一緒に寝る犬が、
二階の私の部屋まで来て、枕元で丸くなって一晩一緒にすごした。
もしかすると、私の異常を感じてそばにいてくれたのかもしれない。
明け方、母と散歩に行くため降りていったが、戻ってきてしばらくすると
転げ回って苦しみだした。抱いても、もがいて下りてしまう。
獣医さんに電話をかけまくって、起きてくれた所に母が連れて行く。
しばらくすると、母が犬を抱いて「○ちゃん、よくがんばったねえ」と、
何度も亡骸に声をかけながら戻ってきた。間に合わなかったらしい。
獣医さんによると、もう何匹も毒殺された犬が運び込まれているらしく
「警察に届けるつもりだ」と言っていたそうだ。
散歩の途中コンビニに寄った母が戻ってくると、店の前につないでいた犬が
なにやらカリカリとドッグフードのようなものを食べていたのを見たそうなので
その時に食べさせられたのだと思う。
その後、私たちは引っ越した。それきり犬は飼ってないが
10年ほどの間、一緒に暮らし、私たちを幸せにしてくれた犬のことは
本当に時が止まってしまったように、今でも思い出すことができる。
※上の写真は拾い物です。