
同じように、宝のような料理レシピを時代を越えて、次世代の料理人たちへ、次世代のお客様方へお伝えしよう、というのが本日の井上の心意気。
外は雪、レストラン「ポンドール・イノ」に足を踏み入れて、そのぬくもりを味わっていただく最初のお料理は、「ごぼうのウフ・ア・ラ・コック」。 温泉卵に穏やかながら複雑な味要素のハーモニーを奏でるごぼうのポタージュがそそがれています。
次は「牡蠣の冷製、クレソンソース、ぺルノー酒を使ったゼリー掛け」。 ほうれん草を巻いた牡蠣は軽くボイル、中央には牡蠣の出汁のフラン、そしてぺルノーゼリーは、粋なアクセントをつけています。
三つ目のお皿は「アルルカン風オムレツ」。 トマトのクーリの絨毯の上にアルルカン(道化師)が座っています。 その衣装の色あいからついた名前。 野菜のムースを5層重ねていきますが、一層毎に軽く固まるまで待って重ねるものですから、なんと調理に5時間もかかるのです。
そして「フォアグラとつぐみのパテのパルフェ」。 スプーンで割ると中につぐみの濃厚なパテのボールが入っていて、嬉しいサプライズです。
お魚料理は「サーモンの薄切り、オゼイユ風味」。 サーモンは瞬間的に火を通し、ソースはほんのり酸味のあるオゼイユ葉(すかんぽ)を最後にいれ、若干のレモン汁で味を締めています。 この締め具合が絶妙。
いよいよメインディッシュ「トリュフを纏った鹿肉、グランヴヌール」。 細かく刻んだトリュフを肉にまぶして調理いたします。 トリュフ、鹿肉双方の土の香りが素晴らしいマリアージュです。 ガルニチュール(つけあわせ)はポテトのドルフィーヌとレタスで包んだラタトュイユ。
デザートは「ナッツのタルト、チョコレートアイスクリーム添え」。 タルトは飴細工のクロシェの巣の中。 そしてもちろん本日はバレンタインデーですので、チョコレートです。
さて、かように書き連ねましたが、話を元に戻すと、料理そのものも、伝えていく料理人、愛してくださるお客様によって、経験を積み、歴史を重ね、さらに磨かれていくものだと思いました。
ね、ショパンの作品も同じでしょ。