私は浮かれていた。

傍から見ても解りやすく浮かれていた。

40も半ばのオバサンをまるで少女のようにさせる仔ヤギの愛らしさ。

ヤギ…恐ろしい生き物だ。


こんなにも弱々しく頼りない生き物に、お前は外で暮らしなさい、と言えず、また、こんなにも愛らしいドンちゃん、盗まれちゃうかもしれない!という親バカぶり炸裂な思考で今はなきサルーキのグリコのクレートを引っ張り出し、昼間は外で除草活動、日が暮れたら帰宅、室内で就寝、というスタイルになった。


突然知らないところに連れてこられたヤギ。

不安でたまらないのだろう。どこにでも付いてくる。

それがもう忘れ去られた私の母性を蘇らせた。

もう…家の中で放しちゃえ☆

案の定、ドンちゃんはキッチンでも私にベッタリ。私はメロメロ。

犬も割と落ち着いている。

なんという平和な光景だろうか。

私の周りに犬とヤギが。 


ところが。

猟欲強めのダックス、ドンちゃんの何気ない動きで興奮!ドンちゃん大脱走!!

ヤギ部屋の方へと逃げていったと思ったその刹那、「バリーン!!」え…???


あろうことか、閉めてあった掃き出しの窓を角で突き破っていた。そして短足のダックス、それを追いかけてしまった。

ダックスはヤギより数倍脚が短いために、割れて尖ったガラス片で口の横を激しく負傷。

大流血だ。肉がベロンとなっていても興奮冷めやらぬ犬、お構い無しでまだヤギを追いかける。


これは一人では収められない。

旦那を大声で呼ぶ。

私は良くも悪くもこういう事態でも冷静だ。

死ぬほどの怪我ではない、急いで圧迫止血だ。

ところか旦那、珍しく声を荒げる。

「お前が調子に乗ってるからだろうが!!!」そーなの。私、調子に乗りまくってたの。正解。

「…大きい声出しても仕方ないでしょ?病院行くからバスタオルと用意お願いします」


急いで犬を病院へ。

私は何人か殺めてきたか?ってほど上半身血まみれ。

犬は7針縫う手術となった。


ヤギの方はと言うと、角を上手く使って飛び出したためほぼ無傷。


ガラスの修理の為に保険会社に連絡を入れる。「ちょっとヤギが飛び出しまして…」「はい???」「いや、ヤギがガラスを…」「え?ヤギですか??」

そんなやりとりがあり、ガラスもほどなく修繕された。


そしてヤギ、角カバーをされる事となる。


〜ヤギ使いの心得〜

調子に乗らない


可愛いだけの生物
残念な窓
角カバー装着時(可愛さ2倍)
猟犬なら褒められイッヌ