【羽生結弦・単独インタビュー】
プロ転向は「結果という形がないからこそ怖いところもある」「いろいろなことを勉強し続けなければいけない」
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「羽生結弦とは何か」の自問
「競技をやめると決めた瞬間から、新しい人生が始まったなと感じ、生活も一日でガラッと変わった。それまでとは生活のすべてが変わり、まるで扉を開けて、新しい世界に一歩踏み出していくような感覚だった」
「実際に自分が(プロスケーターに)なってみると、本当に忙しいですね。自分でいろいろと考えて、いろいろなことを進めていって。これから演技をしていくにあたっても、どういうふうに皆さんに見ていただきたいか、何が皆さんにとって羽生結弦なのかということを、またあらためて自分に問いかけました」
「今まで人任せにしていたものを自分から率先して考え、やっていかなければいけない。そういうことがけっこうあって、睡眠時間もだいぶ減ったなと思います。それに気持ちのなかでは、競技者よりもすごくハードな練習をしなければいけないと思っていて、実際にしています。これまでは試合に追われながら頑張ってきましたが、今は何か、皆さんの期待を超えたいという気持ちもあるのですごく大変だなと思っているけど、とても充実した日々を送れています」
「プロのアスリートになる」の真意
「皆さんが応援してくださる声のなかに、やっぱり難しいことにチャレンジしていること、本当に失敗を恐れずずっとチャレンジし続ける勇気とか、また絶望から立ち上がるところ......そういうところに対しての応援というのが大きかったなと思いました。もちろん自分のスケートに対しての応援というものもあったとは思いますけど、何かそこもひっくるめて全部大切にしていきたいと思ったんです。だからこそ、プロのアスリート。引退ではなく、もっとうまくなりたい、もっと強くなり続けたいという思いからです」
「自分がこれからプロとして活動していくにあたり、練習の光景や4回転アクセルに挑戦していくところを見せる機会はなかなかないなと思っていて。それでも自分の練習を見たいと思ってくださる方もいますし、そのなかで自分のアスリートらしさというか、根本的にある『さらに追求し続ける姿』みたいなものを、見ていただける機会になればいいなと思い、練習を公開するイベントをつくってみました」
公開練習で平昌五輪の"リベンジ"
「やはり平昌五輪の『SEIMEI』のイメージが強いと思いますが、あの時はノーミスをしきれたわけではなかった。もちろんリカバリーとかがうまくいったと思う点はありましたけど、あの時に本来したかった演技というのは、足首の状態もあって全部はできなかった。あの時はそこまで確率は上がっていたわけではないので。今の自分はあれから成長しているところを見せたかったというのが、一番強かったと思います」
「今日はちょっと気合いが入りすぎて空回りした部分もあったかなと思うけど、本来の練習でも3回続けて練習するみたいなことはやっているので、実際の練習形態に近いですね」
羽生結弦としての幅を広げていきたい
「ループのほうは、本当は4回転ループ+3回転トーループにするか、4回転ループ+トリプルアクセルにするか迷ったんです。でも今日は『SEIMEI』のノーミスが目標だったので、ループ+トーループくらいにしておこうかなと思いました。まだ本番で組み込めるほど確率は高くないし、これから自分がやっていきたいと思う活動のなかでその難易度のものをやる必要があるかとか、競技の場だったら得点的にもおいしくないと思うとやる必要はないかもしれないけど、ポテンシャルとしてここまであるぞ、というところはちょっと見せたかったんです」
「4回転半は、できればプログラムのなかで跳ぶ機会があったらなというのは思っています。でも、まだそういう確率にもなっていないですし、正直、今回もやったけど頑張っても全日本の頃の4回転半くらいにしかなっていない。負担がかなりかかるジャンプだけど、そういう意味では今は全日本の頃より左足の状態もいいし、右足首もだいぶよくなってきてこうやって挑戦できているので。これからさらに平昌五輪の経験や、それまで培ってきた経験、学んできたことなどを活かしてもっとうまくなれたらなと思います」
「やっぱり難しいなと思えるからこそ楽しいんですよね。もちろんプロになったら失敗できないというのはあるし、結果という形がないからこそ怖いところでもあると思うんです。でもその結果というのは、これから応援していただく方々が、『また見たい』と思ってくださるかどうかが、すべてだと思っているので、それをちゃんと出していかなきゃいけない。難しさはあるけど、それを追求するのがやっぱり羽生結弦なのかなと感じています」
「いろいろなことを勉強し続けなければいけない。バレエだったり、ダンスだったり、いろんなことを勉強していって、さらにフィギュアスケートとしての幅を、羽生結弦としての幅を広げていきたいと思います」
「イベントでありつつも、戦い抜く姿を見てほしいというのがテーマとして大きかったので、練習という単語を外したくなかった。それに皆さんと共有してそこで一緒に戦っていけると考えた時、シェアというのが自分らしいかなと思った」
(文中敬称略)

