「会議で、意見が出ないんです」

先日、そんな相談をもらった。

みんな、やる気がないわけじゃない。
でも、発言が出てこない。

ぼくは、こう返した。

「それは、やる気ではなく、
質問の問題かもしれません」

会議でよく使われるのは、
「何か意見はある?」という問いだ。

でも、これはむずかしい。

「意見」と言われると、
立派なことを言わなきゃ、と身構える。

だから、みんな黙る。

そこで、問いを少し変えてみる。

「この中で、どこが
いちばん気になった?」

これなら、答えやすい。

正しさではなく、
自分の感覚を言えばいい、からだ。

問いが変わると、
口が開く。

口が開くと、
場の空気が、動きはじめる。

質問は、人を責める道具にも、
引き出す道具にもなる。

いい会議に必要なのは、
気合いよりも、いい問い。

問いは、場を耕す道具だ。


あなたなら、どんな問いで、
その人の言葉を引き出しますか?
 
相手を責める前に、
自分に質問したほうがいい。

パートナーへの不満は、
ある日ふいに、わいてくる。

「どうして、わかってくれないの」
「なんで、やってくれないの」

その言葉が口から出そうになったら、
ぼくはいったん、
自分にこう聞くことにしている。

「ぼくは本当は、
何をわかってほしいんだろう?」

不満の下には、たいてい、
まだ言えていない願いがかくれている。

手伝ってほしい。
気にかけてほしい。
ありがとうと、言ってほしい。

そこが見えてくると、
言葉が変わる。

ぶつける言葉から、
伝える言葉へ。

「なんでやらないの」が、
「これ、手伝ってくれる?」になる。

同じ気持ちでも、
届き方は、まるでちがう。

責める前のひと呼吸は、
自分の願いを知るための、
短い時間だ。

矢印を、いったん、
自分に向けてみる。


あなたが本当に、
わかってほしいことは何ですか?
 
空港のロビーで、
次の国へ向かう便を待っている。

ぼくは1年のうち、
300日ほどを海外で過ごしている。

こう言うと、
「不安じゃないですか?」
と、よく聞かれる。

もちろん、不安はある。

言葉が通じない日もあるし、
予定がくずれる日もある。

でも、あるとき気づいた。

慣れた場所にいても、
不安が消えるわけじゃない、と。

家にいても、
将来のことは気にかかる。
人間関係にも、悩む。

だったら、と思った。

同じ不安を抱えるなら、
心が広がる場所で、
付き合っていきたい。

不安をなくそうとすると、
かえって動けなくなる。

不安ごと連れて、
行きたいほうへ、行く。

そのくらいが、
ちょうどいい。

不安は、消す相手じゃなく、
連れていく相手なのだと思う。

なくなるのを待っていたら、
きっと、一生動けない。


あなたが不安ごと、
行ってみたい場所はどこですか?
 
努力を、
その日で終わらせないほうがいい。

畑をたとえに、考えてみる。

毎朝、水をやり続けるのは、
たしかに尊い。

でも、水はまいた先から、
乾いていく。

一日でも休むと、
畑はすぐに、元へ戻ってしまう。

一方で、
一度いい土をつくっておくと、
その土は、次の季節も生きて働く。

仕事も、同じだ。

がんばる日を増やすことばかり考えると、
自分の体力で、殴り合うことになる。

そうではなくて、
「続く仕組み」を、育てておく。


ぼくが数年前につくった講座は、
今日もどこかで、
誰かのもとに届いている。

ぼくが眠っている、あいだも。

その日のがんばりは、
その日で消える。

仕組みにしたがんばりは、
未来の自分を助けてくれる。

ぼくのまわりでも、
仕組みを持った人から順に、
時間の余白が生まれていった。

体ひとつで走る働き方から、
少しずつ、卒業していく。


あなたのがんばりを、
残る形にできませんか?
 
「けんかしないんですか?」

夫婦のことを話すと、
よくそう聞かれる。

ぼくたちは、
ほぼ24時間いっしょにいる。

仕事も、旅も、食事も。

それでうまくやれている秘訣を、
考えてみたことがある。

特別なことは、
ひとつもなかった。

ただ、ひとつだけ、
決めていることがある。

「無理をしているほうが、先に言う」

がまんできるほうじゃなくて、
しんどいほうが、口を開く。

「ちょっと疲れたね」
「今日は少し、ひとりになりたい」

小さな本音を、
こまめに出しておく。

そうすると、
不満が大きく育つ前に、
空気が抜けていく。

がまんは、
貯めるほど利子がつく。

小さいうちに、
言葉にしておく。

本音は、ためこむほど、
口に出しにくくなる。

まだ軽いうちに、
外へ出しておく。


あなたが最近、
のみ込んだ本音はなんですか?
 
 
計画は、なくてもいい。

そう言うと、
無責任に聞こえるかもしれない。

でも、ぼく自身をふり返ると、
立派な計画があった試しがない。

質問の仕事を始めて、20年。
本を70冊書いて、
いまはパリで暮らしている。

大きな設計図が、
あったわけじゃない。

その時々で、
心が動くほうを選んできただけだ。

おもしろそう。
会ってみたい。
行ってみたい。

その小さな声に従うたび、
道が一本ずつ、延びていった。

計画は、
「こうなるはず」の外に出られない。

でも人生のおもしろさは、
たいてい「思ってもみなかった」側にある。

だから、先が見えなくていい。

いま心が向くほうへ、
一歩だけ、踏み出してみる。

道は、
歩いたあとに、できていく。

いまふり返ると、
断ろうか迷った仕事から、
次の縁が生まれていたりする。

その時は見えなかった点が、
あとから、線になる。


あなたの心はいま、
どっちを向いていますか?
 
仕事ができる人ほど、
自分では仕事をしない。

はじめて聞いたときは、
ずるい話だと思った。

でも、いまはわかる。

これは手抜きの話ではなくて、
「自分にしかできないこと」に
自分を使う、という話だ。

ぜんぶ自分でやると、
一見、うまくいっているように見える。

コストもかからない。
仕上がりも安心。
誰にも迷惑をかけない。

でも、そのあいだ、
あなたにしかできない仕事は、
ずっと後回しになっている。


そして、もうひとつ大事なこと。

任せることは、相手に
「信頼している」と伝えることでもある。

頼られた人は、
思っている以上に力を発揮する。

ぼくのまわりでも、
仕事を手放した人から順に、
新しいステージに進んでいった。

抱えたままの人は、
優秀なまま、同じ場所にいる。

任せるのは、勇気がいる。

うまく説明する手間も、
思いどおりにならない時間もある。

それでも、

あなたの両手がふさがっている限り、
次のチャンスはつかめない。


あなたが誰かに任せられる仕事は、
何ですか?
 
 
貯金の話をしたい。

といっても、お金の話ではなくて。

ふたりの間には、
目に見えない口座がある。

そこに積み立てられていくのは、
いっしょに笑った回数だ。

くだらない冗談で笑った夜。

旅先の失敗を笑いに変えた朝。

なんでもない食卓で、
同じタイミングで吹き出した瞬間。

1回1回は、小さな小さな入金で、
通帳のどこにも記録は残らない。

でもこの残高は、ちゃんと効いてくる。

けんかをしたとき。
すれ違いが続いたとき。

人生の大変な時期を、
ふたりでくぐり抜けるとき。


「でも、あの人とは
あんなに笑ってきたから」

その残高が、
ふたりを持ちこたえさせてくれる。

逆に、どれだけ長く一緒にいても、
笑いの入金がない口座は、
少しの衝撃で底をついてしまう。

この口座のいいところは、ひとつ。

いつからでも、今日からでも、
入金できることだ。


今夜、ふたりの口座に、
どんな笑いを入金しますか?
 
 
友人と、昔の旅の話になった。

おもしろいことに、
彼が覚えているのは、
予定どおりに行けた場所じゃなかった。

電車を乗り間違えて降りた、知らない駅。

雨宿りで入った喫茶店の、
マスターとの長話。

道に迷って出会った、
名前も知らない海岸の夕日。

「予定どおりの観光は
写真を見ないと思い出せないのに、
寄り道はぜんぶ覚えてるんだよね」

彼はそう言って笑った。


たしかに、記憶に残るのは、
予定の外側で起きたことばかりだ。

計画の中には、
「こうなるはず」しかない。

寄り道には、
「思ってもみなかった」がある。


人の心は、
思ってもみなかったことだけを、
深く刻むようにできているのかもしれない。

だとしたら、予定がくるった日は、
記憶に残る日のはじまりでもある。

乗り間違えた電車が
どこに連れていってくれるか、

少し楽しみにするくらいで、ちょうどいい。


最近あなたは、
どんな寄り道をしましたか?
 
 
先日、メールでこんな質問をもらった。

「どうしたら売れるようになりますか?」

ぼくの答えは、
少し意地悪に聞こえるかもしれない。

「売ろうとするのを、やめてみませんか」



思い出す店がある。

旅先で入った、小さな器のお店。

店主は売り込みをいっさいせず、
ぼくが手に取った器のつくり手の話を、
うれしそうにしてくれただけだった。

「買わなくても、話せてよかったです」

そう笑うから、気がついたらぼくは、
器を3つ抱えてレジに並んでいた。

人は、売り込まれると財布を閉じて、
大切にされると心を開く。

順番が、逆なのだ。


売ろうとすると、
言葉がぜんぶ「説得」になる。

好きでいると、
言葉がぜんぶ「紹介」になる。

そして人が買いたくなるのは、
説得ではなく、
誰かが心から好きでいるものだ。

ぼくも、つい売ろうとしてしまう日がある。

そのたびに、あの店主の笑顔を思い出す。


あなたは自分の商品の、
どこがいちばん好きですか?