『絵や音楽は生き物だ』


そういう言葉をよく聞く



絵は自分のなかにあるからよく解る。


しかし、音楽はどうなのだろう・・・


形のない世界、流動的な世界・・・一瞬の芸術。



自分がギターを弾くようになって解ったことは、


音楽も絵同様、譜面通りをただ弾く、という決まりきった

世界をぶち破り、


自分の感性の赴くまま表現することが、素晴らしく楽しい

ということだった。



結局、やはり絵も音楽も自分を知るツールとなり得る。


素晴らしい創造からの贈り物でなのある。。。




ゴローと私はギター職人の仕事場でよく顔を合わせるようになった。


加速的に、二人の仲は親密になっていった。


創造活動という場で解り合える親友・・・


そんな友達がいなかった私は、彼との時間は本当に

意味のあるものだった。



それでもまだ絵を描くことができなかった私は、


ゴローのギターに対しての姿勢に、次第に焦りを感じるようなった。



絵について語ることはできても、描いてそれを表現することを

していない!



口ばかりの自分が恥ずかしく、情けなく思った。。。



彼の音楽のおかげで、凍った心の世界は融け、


春の大地から芽吹くような、うずうずとした感覚は確かに

生まれてきている




ある日、私はギター職人と一緒に、有名なギター奏者のライブに行った。


それだけ有名な演奏者なら、きっとすごい音を聴かせてくれるんだろうな・・・


高ぶる期待感!



演奏が始まった。



あれ?なんだ??  全然響いてこない・・・


ギター職人と私は顔を見合わせた。



これが、プロの音???


技術は確かに素晴らしいが・・・・・・・



ライブ前半が終わり、休憩、そして後半の演奏が始まった。



「ちょっと喉が渇いたので、不謹慎ですが、

ビールを飲ませてもらいますね~」


演奏者はゴクゴクと美味しそうにビールを飲み干した。


その飲みっぷりのよさに、会場が一気に和む


演奏者本人も前半とは違い、リラックスしているようだった。



チューニングが始まる。



初めの一音・・・



!!


ギター職人と私は、また顔を見合わせた。


今の、音っ!!!


ね、今の音聴いたっ!?



身体に戦慄が走るような音だった。



そして・・・


後半は全身が震える演奏会だった。




ギター職人のところで、私はゴローにその話をした。



「おまえ、その演奏でなにか見えたか?」


「は?なに??見に行ったんじゃなくて、聴きに行ったんだよ!」


「俺は・・・・景色を見せることができる」


「・・・・はぁ~~~?」



「俺が弾くと、雪景色が見たかったら、雪が降ってくる・・・


俺は聴く人にそれを見せることができる。」




私たちは森林に着いた。


広葉樹の葉はすでに落ち、その落ち葉の色ももう枯れて、


辺りは、秋の終りの少し淋しげな風景だった。



ギターを弾くには少し肌寒く、手がよく動かないのではないか


そんな心配など微塵も感じさせず、ゴローはギターを取り出した。


彼しか弾けない、12弦の特注のアコースティックギター。



ギターには不向きと思わせる短い指で、音の調整に入る


「この大自然のなかで、コイツ、ビビって縮こまってるわ」


は~、そんなことわかるんだぁ・・・と、私は感心した



音が流れ出す・・・




彼の音楽は即興演奏で、楽譜を一切持たない。


どんなライブでも、その時の雰囲気を感じて音楽を創りあげる。



たしかに、響きが悪い・・・



それでもおかまいなしにゴローは自分の世界を弾き続けた


ギターをどこまでも愛しているのが、伝わってくる。



私は、彼の世界にどんどん惹き込まれていった・・・




どこからか風がそよぎはじめた




しんと静まり返っていた森が、音に共鳴しはじめる


ギターの音色が、まるで生きているかのように響きわたる




そよぐ風   ゆれる木々   ギターの音色・・・



すべてが一体となって、私を包み込む。。。





私のなかで何かが開き、あふれだした


その瞬間、森の景色が変わった


みるみるうちに、木々や枯れた落ち葉までもが色づきはじめる




あか  みどり  きいろ・・・



辺り一面、鮮やかな落ち葉の絨毯




私はその奇跡のような美しい光景に、心を奪われた


ふいに景色が滲む・・・




涙が滝のように流れ、この世界の景色の一部と同化した





まるでファンタジーの世界・・・


自分は一体どこにいたのだろう・・・


余韻に浸りながら、私は久々のまっさらな紙に向かっていた。



あの演奏の後、彼に言われた言葉を私は思い出した。


「ごちゃごちゃ言わずに描けよ。おまえは甘えてるだけだ。


俺は弾くしかない。弾かなきゃ生きていけないからな。」



一番、触れられたくない部分・・・


でも、ゴローはそこに真っ向から切り込でくる


それがあいつのやさしさ


そして、痛いところを突かれたそれが私の現実



ここから逃げちゃいけない


ここをみなきゃ、私はいつまでも死んだままだ


その痛い場所を切り開いてみようと思った




                           《 源 》                               






そこはとても静かな空間だった


果てしない可能性を感じた



天使がまた微笑んでいた






一気に生み出した天使の作品をゴローに見せた。


彼はとても喜んでくれた



次の日、またゴローから電話があった。


「あの絵の天使の夢をみたんだよ。


自分の身体が黄色のすごく気持ちいい光で包まれてな、


あの天使が俺の身体を癒してくれたんだ。


ありがとうな。。。」






私はそれ以降、なぜかあまりゴローに会わなくなった。


今、考えると理由はあまり思い出せないのだが、


でも、きっと、お互いの魂の約束が果たせたから

なのだろうと思う



ギター職人とも疎遠になり、私自身もあまりギターに触らなく

なった。



そんなある日、電話が鳴った。


ギター職人からだった。


「ゴローが死んだ。」


私は心臓が止まりそうになった。




「ゴローが自殺したんだ。」





私の知っているゴローの、ギターを弾く信条は、


どんな人にも自分の音楽を聴いてもらいたい・・・だった。


だから、彼は色々な病院や施設を、ギター片手に

回っていた。


もちろん路上演奏もするし、ライブをしても、

料金は初めから設定せず、


客が、自分が聴いて価値を感じた分だけ、

封筒にお金を入れる料金システムだった。



ある時、彼のその地道なギター生活を一変する

出逢いがあり、


ゴローは、ずるずるとその音楽仲間に惹き込まれて

いったらしい。


その仲間のなかには、女性の心理カウンセラーが

いたらしく、


ゴローはその彼女の虜にもなってしまったと、

ギター職人は語った。




「その、仲間の音楽ってどういう音楽なの?」


「だめだめ!ぜったい君は聴いちゃだめだよ!


君みたいな人が聴いたら、ハマってしまって


ゴローみたいに虜になってしまうよ・・・」




「あいつは魂を売ってしまった・・・

大金も入ったみたいだったから。


でもな、その日、大きなコンサートの前に気づいた

らしくて・・・


自分の音楽は違う・・・って!仲間と口論になったらしい。


でも、仲間の説得にあって、行き詰ったあいつ・・・・


そのまま窓から飛び降りたみたいなんだ!」








愛おしさとは・・・ 魂が知っている感覚・・・



約束を・・・ここに生まれる前に交わした絆・・・



その魂同士の神聖なる感覚・・・



愛という宇宙の喜びに満ちた感覚・・・






                                        

                              《いのち》




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