シトラスとグラッドストーンの交差点近くに佇む、何の変哲もない小さなバス停。
そこから全てのお話は始まったのでした。あの夜、午後七時を過ぎると私は金曜の夜特有の高揚感に浸りながら家を出ました。その日は友だちの家でのパーティーか何かに誘われていたのです。
前回のパーティーを1時間遅刻した前科がある私は、今回はさすがに早めに行こうと時計に目をやりました。
ふむ・・・・・。
バスが出るまであと10分。現在位置からバス停まで、正味700メートル。
あ・・・やばい・・・・\(^o^)/
私は、シマウマを追いかけるライオンのような気持ちになって、薄暗くなり始めていたグラッドストーンアベニューを全速力で駆けてゆきました。私が住んでいた地域では、40分に一本しかバスが来ませんでした。バス停で待ちぼうけを食らいたくない私は、とにかく必死に走るしかなかったのです・・苦笑
ですがまあ快心の走りのおかげか、五分前くらいにはバス停に到着する事ができました。
ぜえぜえと息を切らし、汗もだらだら。せっかくの化粧が流れてゆく感じが肌から伝わってきました。
まあ、私もまだまだ若いよなー、と思いつつ、安心した気持ちでバスを待ち、
2分…
3分…
5分…
10分…
15分
バスが来ねえ!!!!!!!!!!
本当にアメリカの田舎のバスの適当さと言ったら、ひどいのです。あるときは平然と20分ほど遅れ、ある時は気まぐれに少し早く来たりする。乗っていたバスがエンストか何かを起こして、無理やり下車を迫られた時もありました。
私はいらいらした気持ちでバス停に佇み、ただひたすら走ってきては過ぎ去っていく車たちを見つめていました。こうして私がアメリカの公共交通時事情を呪いつつ、ただひたすらバスを待ち焦がれていたこの時、その人はとことこと歩いてきて、バス停のベンチに腰かけていたのでした。
あーあ。また今回も遅刻になったらもうほんと面目ないよ…どうしようほんと。迎えに来てもらうのも悪いしなあ。まぁ頼めば嫌な顔せずにすぐ来てくれるだろうけど・・・。うーんでもやっぱり申し訳ないなあ・・・。それにしてもバスいつ来るんだろ。もしかしてもうすでにいっちゃった・・・?
「ヘイ 雨が降ってきたけど、ここに座ったらどうだい?」
いやでも五分前にはここにいたわけだし、ってことはやっぱりバスのほうが遅れてるんだよな。あーあ。まじ。やってくれるじゃねーか…。一体あと何分待てばいいんだよ……
あれ・・
今誰かに話しかけられた?
見ると、そこには男の人が座っていました。
うっわーバスに夢中でこの人全然気づかなかった!通行人Aだったまじ!ごめん!
どうやら雨が降り始めたようで、濡れないようにバス停の屋根の下に来るように勧めてくれていたらしかったのです。
私はお礼を言って、通行人Aの隣に腰かけました。
Aは黒のコートにワイシャツ、ジーパン、という落ち着いた服装をしていて、教頭先生のようなやぼったいメガネをかけていました。ごく普通の大人の人、という印象を受けました。
「そういえば天気予報で、今日の夜から降り出すって言ってたなあ。そんなに強い雨じゃないらしいけど、しばらく降って明日の朝にはやむらしい。そんでもって気温が・・」
通行人Aはなぜか天気についてつらつらと話し出しましたが、バスの事で気が気でない私は彼の天気予報を全く聞いていませんでした。
「・・・ところで君は、ここ出身じゃないの?」
(うわ、Aがなんか聞いてきた!)「あ、留学生です。日本からの」
「へえー!そうなんだ。どこの学校に行ってるの?」
そんな感じで、頭の中の八割がバスの事で埋まっているまま、私はAと簡単な会話をしはじめました。
Aは、仕事をしながら学生をやっているとのことで、バスに乗ってくる友人を待っているらしかった。
(かなり大人っぽく見えるのに・・)「学生なんですか?ちなみに、年はおいくつですか?」
「いくつに見える?」
「うーん・・30くらい?」
「30・・・?(´・ω・`)」
「え、違うんですか・・?」
「もっと若い・・・(´・ω・`)」
「すいません・・!あの、大人っぽく見えますね!えーと、じゃあ28とか?」
「oh no.....」
「え、あ、あの・・・・・すいません」
「ハハ、OK!OK!わかったよ!」
うろたえる私を制止するよう、手をすっと前に出すA。
何が始まるのかと、恐る恐る様子をうかがっていると、
Aはその手をゆっくりと顔の方に運び、教頭眼鏡を外しました。
ふいに現れたぱっちりとした目が、私を見つめる。
「これだと、どうかな」
そうして、ふんわりと笑うA。
イケメンか!!!!wwww
悔しいけどさまになってる!!さまになってるよA!!
普通の人がやったら完璧笑うとこなのに!!!
そんなことがあって、私はうわの空での会話を止め、Aとの会話に集中し始めました。 ※ひどい
会話の中で、Aはまあ結構いいやつなんだという事が分かりました。
「あ、ちなみにお名前は?」
「シーザーだよ」
(サラダみてえ・・・・)「そうですか」
「ねえ、電話番号きいてもいいかい?今度お茶でも一緒に飲みにいかない?」
「は?え、なんで?」
「なんで?? えっと、ほら、友情ってのはどこから始まるか分からないだろ?」
「え・・・(なんかキモいな)」
まあそんな感じで、私とシーザーは出会ったのでした。
はは、懐かしいww
まさかこの時はこのサラダ男と付き合うなんて夢にも思いませんでした

