退職前はメーカーのエンジニアだった。
数年がかりの次世代商品開発プロジェクトのメンバーとして、仕事には満足していた。

ただし、会社自体は相当やばいと感じていた。

100名ほどの小さな会社だが、大企業の完全子会社で、社員の半分は親会社からの出向者。いわゆる大企業病の末期で、組織も個人も有効に機能していない。一生懸命がんばっている人もいるのだが、何をやるにもプロジェクト管理が疎かで、気持ちだけで乗り切ろうとするので無駄も多いし抜けも多い。
目標設定が曖昧で、厳しく結果を求める空気がないので、プロ意識が低い人が多い。だから、年中残業しているのに、出荷日程を守れない、品質問題を起こす。ネガティブ・スパイラルに陥り、中堅クラスが何人も倒れた。数ヶ月の休養を余儀なくされた人も1人や2人じゃない。

組織を変えたい気持ちもあったが、自らの力不足もあって限界を感じていた。独立志向もあったし、目先のプロジェクトが一段落する頃が潮時かなと密かに心に決めていた。

が、「その日」は突然やってきた。